イナズマイレブン
□お悔やみ申し上げましょう
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「ガイア、『グラン』、ダイヤモンドダスト、『ガゼル』」
お父様の声が響く。それ以外は、微かな呼吸音しかしない。皆息を殺して、瞬きもしないで、
「そしてプロミネンス、『バーン』」
ひゅっ、と、短く息を呑む気配がした。
「貴方達が、マスターランクのキャプテンです」
「はい!」
綺麗に、声が重なった。
レアンが奥歯を噛み締めた音が、聞こえた気がした。
「レアン、・・・レアン、練習始まるよ」
『石』を手にした後の最初の練習の日。
胸元から巡るエネルギー過多な体調も漸く落ち着いて、残ったのは少しの吐き気とか眩暈とか頭痛とか。僕はそんなの慣れたものだけれど、練習場に集まった皆はまだ辛そうだった。
そしてレアンは、時間になってもプロミネンス寮から出て来なかった。
幾ら呼んでも答えがないので、仕方なしに勝手に部屋へ踏み込む。
「ねえ、レアン、」
「・・・嫌、嫌よ、行きたくない」
直ぐ隣がベッドなのに、固い床に転がったレアンは訥々と吐き出す。
「あたし、あんなに頑張ったのに。マスターランクの、プロミネンスの、キャプテンになりたかったのに。・・・ううん、ホントは、あたしじゃなくても、夏彦でも、アンタでも良い。でも、晴矢だけは、嫌だったのに・・・っ」
レアンはクッションを握り締めて咽び泣く。彼女は本当に、嬉しいのも悲しいのも真っ直ぐだ。
「晴矢を、バーンって呼ぶのはあたし、我慢できる・・・と思うけど、バーン様、だなんて、絶対、嫌」
「ねぇ、レア・・・杏ちゃん。僕もね、晴矢の事、他の呼び方するの嫌だけどね。杏ちゃんを、レアン様なんて呼ぶのは、もっと嫌だよ」
『茂人! やったわ、あたし達、マスターランクよ!』
『達・・・? え? 僕も?』
幾ら完治したとはいえ、人生の半分以上を布団の中で生きて来た僕が?
『そうよ! 華も、夏彦も、それに晴矢も同じ『プロミネンス』だって!!』
『そうなんだ。良かったね、杏ちゃん』
『もうちょっとしたらキャプテンも決まって、そしたらあたし達、きっとすぐ『ジェネシス』になれるわ。あたし、絶対キャプテンになってやるんだから!』
マスターランクに選ばれて、ジェネシスになって、キャプテンになって、
そうしたらその先には戦争が待っているのだけど、杏ちゃんはそんな事まるで気にしない。
ただ誰にも負けたくないと。晴矢と一緒に勝ちたいと。
君は僕の唯一の同志。
君は僕の理想の人。
「僕達、きっと同じだよ。ただ、晴矢の為に、何かしてあげたいだけなんだよね」
例え晴矢の全ては、僕達じゃない誰かの為だったとしても。
「だから晴矢が『ジェネシス』になりたいっていうのなら、僕達はもっと強くなるべきだ。僕達は、『バーン様』という有用なキャプテンを持てた事を幸運に思うべきだよ」
呼び名ひとつに拘って、泣いている暇なんかどこにもない。
今まで一緒にご飯を食べて、掃除をして、お喋りをして、サッカーをしていたお日さま園の仲間達は、最早従わせるべき部下か、ジェネシスの座を争う障害でしか無くなった。
僕の仲間は共に朱を纏った同志と、僕らを導くキャプテンだけなのだ。
お父様なんか僕には関係ない。マスターランクの、ジェネシスの称号なんかどうでもいい。
でも、このたった10人の仲間の為に、晴矢の為に、僕が唯一、晴矢に相応しいと思えた女の子の為に、
僕はもっと、いろんな物を捨てて、力を求めなくちゃいけないんだ。
( だから、 )
ごめんね、さよなら。
『リュウジ君』、『砂木沼さん』、『ヒロト君』、『風介君』、『夏彦』、
「・・・頑張らなきゃね。レアン」
「そうね。バーン様が待ってる。行きましょう、ヒート」
「うん。行こう」
( さよなら )
お別れだね、『晴矢』、『杏ちゃん』、
そして、『厚石茂人』。
+
矛盾してるようなそうでもないような・・・。
ほんとヒート好きです。ゲーム3じゃ池面と獣牙で2つも技枠潰してるから使う気になれないけど(笑)。