イナズマイレブン

□妹さんを俺に下さい!
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 鬼道さんや豪炎寺さんは、誰かしらからよくシスコンだと評されている。
 妹が話題になると普段寡黙なのが嘘みたいに饒舌になったり、土産だとでかいカメのぬいぐるみ抱えて帰って来たり、暇を見ては電話をしたり時差を計算して泣く泣く断念したり。
 成程豪炎寺さんは俺から見てもシスコンだと思う。基本が格好良いだけに何か勿体無い。

 でも俺は、少なくとも鬼道さんの事をシスコンだとは思わない。





 午後の練習が終わった後、それぞれ自主連に充てる時間。俺は暫く壁山と綱海さんと一緒に練習していたけれど、ザ・タイフーンのシュートコースに無理矢理割り込んだ時に妙な捻り方をしたので、宿舎に引き上げてアイシングをしていた。
 そうしている内に夕食の時間が迫り自室を出ると、視界に主張する鮮やかな赤。
 椅子とテーブルしかない2階の休憩室の使用頻度は低く、今も鬼道さん一人が窓際に座っていた。ノートとパソコンを広げているので、戦略でも練っているのだろう。
 けれど今、彼の目は窓の方に固定されている。そっと近寄って外を伺うと、音無と立向居が何か話しながら宿舎へ戻ってくるのが小さく見えた。
 魔王・ザ・ハンドの前例もあるし、またサッカーの事である可能性は高い。
 けれど、2人を見詰める鬼道さんの目は、ゴーグル越しでも穏やかじゃない。

「怖い顔」
 呟けば、たった今気付いたように俺を見詰めた。
「・・・木暮、か。お前、練習は良いのか」
「ま、どうせベンチだろうし? ・・・って嘘だよ。脚捻ったから冷やしてた。大丈夫。腫れなかったし大した事ないよ」
「なら、良いが」
 言って、今更パソコンに目を向けた。
「立向居も不運だよねー」
 何にも悪くないのに、俺と鬼道さんからこんなに睨まれて。
「・・・俺は、春奈が望む相手と幸せになってくれるのが一番良いと思っている」
「ほんとに?」
 表情を消した鬼道さんの心中は伺えない。

「まぁ、鬼道さん的には、音無が誰かに選ばれるより、音無が誰かを選んだ方がきっと諦め付くんだろうね」
 私この人が好きなの、と、言われればそうかおめでとうとも言えるだろう。少なくとも、好きだって言われたのどうしよう、とか相談されるよりは。
 増して俺みたいに頼りないのに持って行かれるのなんて、ほんとは殺したいくらい嫌なのかもね。

「でも俺で手を打ちなって」
 鬼道さんの眉が寄った。
「だって立向居は音無を好きじゃないよ。そりゃ勿論今のとこはだけど」
 でも少なくとも俺は現段階で音無を好きで、俺の何を捨ててでも守りたいし、幸せにしたいって思ってるよ。
「ねぇ、気が早いけどさ、アンタに誓おうか」
 俺は、どんな時でも、健やかなる時も病める時も富める時も貧しき時も、たとえ音無が、俺を嫌いだとどんなに高らかに宣言したって、
「アンタの代わりに、彼女を愛し、守る事を」

「・・・別に、お前を頼りないとは思わない」
 俺から目を逸らした鬼道さんが、ぽつりと呟いた。
 ノートとパソコンを閉じて立ち上がる。
「だが、認めん」
 小さく、しかしきっぱりと宣言した声に重なって、只今帰りましたーと言い放つ音無の声が響いた。


 鬼道さんはシスコンじゃないと思うんだガチだと思うんだ。
 でも鬼道さんにとって春奈ちゃんって聖域だから、恋愛対象って訳でもない気もする。

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