サンデー系

□永遠を駆け抜ける一瞬の僕ら
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『こんな日が、ずっと続けばいいのにね』
 幼い声に呼ばれて、目を覚ました。





「あっ、母様、おはよう!」
「ああ、私・・・、眠っていましたのね」
 うつ伏せていた机から顔を上げた。
「疲れてるの? お茶入れてあげようか?」
 そうだ、この前羊羹を貰ったの。弾む娘の声はひたすらに無邪気で。
 まるであの子の様だ。
 直前の夢の所為もあって、舎々迦の姫の姿がダブる。

 私が影として寄り添った、何も知らない、幼い鬼姫。

『・・・私・・・怖い。このまま殺されてしまうの・・・?』
『いいえ。あなたは死んではダメ。私が守りますわ』
 何も知らずに民を苦しめた事も、私の両親を殺した事も全て赦して、彼女の代わりに私が死んであげようと。
『こんな時の為に私がいますのよ』
 殺されるのは怖いと泣き、身代わりになる私にありがとうと笑う子供を、私が守ってあげなくてはと。

 なのにあの子は、いつの間にか大人になっていた。
 幼い振りで私を騙し、自ら処刑に赴いて、火刑の瞬間に恨みは無いと笑って見せた。

『ああ、今日はとってもいい天気』

 そうして生かされた私は撫子島へ流されて、島の子供達を守る為に泣いている暇も無くなって。
 けれど、あの子達も嘘を付いてまで私を本土へ送り出してくれた。
 皆、いつまでも私に守られているばかりではない。

 空さんに出会ってから、私はいつの間にか一番弱くて一番馬鹿だ。
 いえきっと最初からそうだった。空さんに出会って、私は漸く大人の振りをしなくても良くなった。
 初めて気球で飛んだ空から見た世界の広さは、
 地に落ち舞い戻った本土での激動は、
 空さんの厳しさに、優しさに寄り添い喰らい付いた日々は、
 余りに眩しく、鮮烈で、愛しい、

 そう、私は弱いけれど、両親に、白雪に、撫子島の人達に、そして、今は空さん達に、
 守られ、生かされ、何度でも生まれ変わって、少しずつでも強くなる事ができる。
 そうして都や、宝や、神を巡る激動の日々を、私なりに戦って。

「ねぇ母様、早く迎えに行こうよ!」
「ああ、もうそんな時間」
 考えに沈んでいた腕が引かれて、眩しい太陽の下へ。
「父様、今日こそちゃんと帰って来るかな?」
「どうかしらねぇ」
 深い青空に、黒髪が翻る。
 この子も、今は私が守らなくてはいけないけれど、きっと直ぐに私の手を離れて強く、歩き出すのだろう。

 私と、あの人の、子供なのだから。

「あ、父様ー!!」
「おぉ、なんや、迎えに来てくれたんか」
 近付く影に、小さな手を大きく振り上げる。
「おひさしぶりでーす!」
「ぽち! 会いたかったよー!」
 ぽちを抱き止める娘から、傍らの彼へ視線を移した。

「ただいま、ねーちゃん」
「おかえりなさい、空さん」

 ああ、
 今日はとってもいい天気。


 ぽち編でも書きましたが空さんと閨さんの娘は「桜」ちゃん。両親共漢字一文字なので揃えたのと、閨さんのピンク髪由来で。
 でも桜ちゃん自身の髪色は空さんの本来の色が遺伝して黒髪。本当の苗字は「天邪狐」だけど、空さん有名人だから普段は閨さん共々「六兎」を名乗ってる。
 という無駄設定。





君のいる景色に いつまでも並んでいたい
終わりない望み(おもい)は巡る
永遠を駆け抜ける一瞬の僕ら 舞い降りた地上は爽快な深いブルー
君の優しさに僕は再生した(うまれた)
甘い野望みたいな未来 滅びゆくより導かれるまま・・・

by 永遠を駆け抜ける一瞬の僕ら (初出:3rdアルバム『Crystallize〜君という光〜』)

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