サンデー系
□最後の離島
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「黒羽・・・。・・・・・・すみません・・・」
何か強い力で理不尽に奪われる。
名前さえ変えて拭い去った筈の忌まわしい傷。
叫びたい程悔やんでも、手を差し伸べることさえ出来ない。
『ここからやっと始まるんだ。僕らの人生が』
空と海を背にした貴女は、何処までも美しかった。
蝉の鳴き声が響き渡る夏は、どこまでも高く、広い。
暗い地中から這い出して、今、漸く生をうたう。
『傍にいてくれるだけでいいんだ。二人で幸せになろう、際刃』
あの日、貴女が握った掌を、まだこんなに覚えているのに。
「・・・俺は・・・戦うことができない・・・。できるのは、あなたの身代わりとなり・・・盾となることくらい・・・」
まだ終わりじゃない。
まだ終わりじゃないのに。
すみません。結局、盾になる事さえ出来なくて。
「・・・バカだな・・・言ったろ・・・。傍に・・・いてくれるだけで・・・いいって・・・」
光も無く。
音も無い。
思い出す。
あの日、無力だった俺。守れなかった貴女。俺の所為で、血に染まった両手。
あぁ、俺は、貴女の為なら何時死んでも構わない。そう思って今日まで隣を歩いて来た。それなのに・・・。
掌に、あの日の温度が蘇った。
黒羽の指から熱が伝わって。一瞬、全ての感覚が身体に戻る心地がした。
黒羽の、体温が、笑顔が、確かに感じられたんだ。
( 俺は、なにひとつ叶えることが出来なかったけれど、)
恋をした。
命を懸けて貫く程の、
尊い想いがそこにあった。
( 貴女と出会えて、今まで、生きて・・・ )
形さえ今はなく、
存在した証はどこにもないけれど、
貴女と過ごした日々は、いつまでも。
+
最初に曲名を見た時、『最後の雛鳥』と空目しました(どうでもいい)。
最後の離島へ行くのなら 何処へも行かず眠ればいい
空を渡るもの達よ 地を這ってゆくもの達よ
もうすぐ聞こえる 水鳥が羽ばたいてゆく音
同じ季節 そう同じようにこの場所でまた 夕陽をみているよ
by 最後の離島 (初出:6thアルバム『LOCKS』)