降り止まない雨

□Winter Dust
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二月に突入し、冬本番。といった感じに寒さが増した。

「あ〜、あと一週間だよ!どうしよう…。」

となりから聞こえてきた、嘆くような声。

「何の話?」

となりを向いて問う。

「バ・レ・ン・タ・イ・ン!」

「あぁ…、そっか。もうそんな時期か。」

わくわくしたように息を弾ませて云う彼女。

「聡子は、瑞希にあげるの?チョコ。」

今度は逆方向からの問いかけ。

「あたし?てか、なんであたしが瑞希の馬鹿にチョコあげるわけ?」

「え?好き、だから?」

「まさか!」

冗談でもあげない。
一度も、あげたことなんてないし。

「え〜…そうなの?あたしってば、聡子は瑞希が好きだと思ってた。」

「私も〜。」

周りで巻き起こる、勘違い。


「あたしは、瑞希にそんな感情を抱いたことないよ。」

「ずっと一緒に居るのに?」

「うん。」

「家とか、近いのに?」

「うん。」

「毎日、登下校一緒なのに?」

「うん。」

「「え〜、」」


「だいたい、ずっと一緒に居るから好きだとか、登下校が一緒なのは関係ないでしょ。
幸成だって同じだし。好きになる理由がないし。」

そうだ。
小さい頃からずっと一緒で、毎日一緒に遊んで、ケンカもいっぱいして。

悪友みたいな、そんな感じ。

男として瑞希を意識したことがない。


「幸成と瑞希のどっちかと思ってたんだけど。」

「またさっきと同じ理由?」

「え、うん。」

「それは間違ってるよ。
あたしはちゃんと、好きな人居るから。
もちろん、幸成でも瑞希でもない別の人。」

好きな人は、別に居る。

「初耳!」

「詳しく聞かせて!」

「あんたたちねぇ…。」

女って、どうして恋の話が好きなんだろう。
人のものなら、特に食い付きがいい気がする。

それは自分も同じ女だから、例外じゃない。

実際、亜結と幸成のこととか、藜と瑞希のこととかくっつける作戦を考えたりした。
亜結と幸成の二人は、元から想い合っていたからそんな時間はかからなかったけど。
残された二人は、いまだに平行線。
出逢ったばかりの頃よりは距離が近付いているみたいだけど。



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