降り止まない雨

□bluesky
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Blue sky



ぐだぐだと流れていく、無意味な時間。

そして、緩やかに流れる雲。


いつしか、わたしは何を求めてこの空の下に居て、
届かないと知ってる空に手を伸ばすのだろう。



「…………。」


長い、長い、憂鬱な日々の集大成。

夏休み。

蝉がせわしなく鳴き、その鳴き声に苛立ちを覚える。


終業式が終わって、教室に戻る。

一学期最後の授業を終えて、クラスメイトたちは一人、また一人と教室から消えていく。
活気のあった校内も、時間が流れるにつれて、その活気も遠く消えた。


「……綾瀬(あやせ)?」

ふと、聞き覚えのある声が、現実逃避していた意識を現実に引き戻す。

「どうしたんだ?」

振り向けば、クラスメイトの一人がそこに立っていた。

「京介(きょうすけ)…。」

「どうしたんだ、そんな浮かない顔して。明日から夏休みなんだぜ?もう少し嬉しそうにしたらどうだ?」

彼は教室の端から、一番端っこの、窓際の席に居るわたしの元までやってきた。
そして、誰も居ない前の席に腰を下ろす。

「んー…、そうなんだけどね…。」

何だか、そんな気分になれない。

「京介は、楽しみなわけ?」

「まぁ、一応な。授業に出なくていいってのが一番の利点だな。」

「あぁ…。そっか。」

気のない声を漏らすわたしを見て、京介は怪訝な顔をする。

「なんだ、具合でも悪いのか?」

「んー…そなのかな。」

「なんだそれ。」


何を話してるのか、まったくわからない。

目の前に居るクラスメイトと話してるけど、心は他の誰かと話してるような、そんな感覚に陥る。

「で、帰らないのか?」

「うん…、そうだよね…。」

午前で終わった授業。

今は、午後になろうとしてる。

お腹すいたな、なんて呑気に思う。

「ま、動きたくないならそれでもいいけど。」

そう云って、彼は立ち上がる。
椅子を元に戻す動作を見守って、彼が自分の席に向おうとするのを、わたしは無意識のうちに彼の腕を掴むことによって止めていた。
「…一緒に帰るか?」

「…うん。」

こんなに、他人に素直になれたのは、人生で初めてだろう。

それから、若干、名残惜しく感じながら、校舎を後にした。



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