献上品

□ここはオレの場所
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 ―――夢破れていびきあり、

 ―――須藤鬼にして草木深し……


―――ああ、兵どもが夢の跡

ここはオレの場所




合宿1日目。
『……死ぬっ!! 殺されるっ!!』

高校最初の合宿で二、三年生洗礼を受けた一年生達は、もはや廃人一歩手前かというくらいに疲労の色が濃かった。一日目の練習をこなした彼らは、一刻も早く寝ようとさっさ入浴を済ませ各自、部屋に吸い込まれるように入っていく。須藤と春吉、そして柴は部屋割りが一緒で、彼らもやはり疲れた様子で部屋に入っていった。するとその中には、マネージャーの皆川がいた。
「早! みんなもう上がったの?せっかく私が布団敷いてやろうと思ったのに…、やっぱあんたら自分でやって。じゃあおやすみ〜」
おやすみと手を振って出て行く彼女の容姿に騙されるには、入部してから時間がたち過ぎていた。今ではもう彼女の性格は皆が知るところなので、部員同様風呂上がりの浴衣姿に彼らは少しも反応せず、布団敷いてけよと言いたげな顔でまだ乾ききらない長い髪を見送った。
皆川が去った後、春吉だけがてきぱきと寝支度を始める。
「あー疲れた。 でも楽しかったね」
「………」
須藤と柴は同意しかねて沈黙する。そんな二人に構うことなく、春吉は今日こなしたメニューのあれが楽しかった先輩のプレーが凄かったとか本当に楽しそうに練習を振り返った。

「よし、じゃあ明日も早いし、ボクもう寝るね。 で、お願いがあるんだけど…。ボク、寝相悪いから端でいい?」
「ああ、別にいいけど…」
「ありがとう! あ、隣…」
隣、という単語に柴が名乗り出ようとすると、いきなり部屋の戸が大きな音を立てて開かれた。
「はーるーよーしー!」
「うわ、狭山先輩っ!?」
春吉が布団に入ろうとしたまさにその時、いきなり部屋に入ってきて春吉に抱きついたのは狭山だった。
「にゃははー! オイラ、春吉と一緒に寝てもいいー?」
「ええっ!?」
いきなりのことに春吉が驚いていると、静かに柴が狭山を止めに入る。
「先輩、先輩はこの部屋じゃありませんよ。それと、大門はもう寝るそうなんで離してやって下さい」
「えーーっ! やだ!」
「やだじゃない!あんた子どもか! しかもさりげなく布団に入るなっ!」
「子どもでいいよーだ! じゃあ、子どもは子ども同士で寝ような!」
「ええっ!? なんでボクは問答無用で子ども扱いなんですか!!」
……コイツ!! ただでさえ人が疲れてるっつーのに!!!
疲れとともに狭山へのイラつきがピークに達した柴は、もう先輩という遠慮もなく狭山を追い出すことにした。
疲れてんのに、こんなうるさいのに居座られてたまるか! それに……大門の隣は俺のものだ!!

「なら!保護者としては、子ども同士で寝かせるわけにはいかないなあ」
「し、柴君まで……酷い…」
「それに!スペース的にも小さい子とは大きい大人寝た方が効率的じゃないですか」
「小さい子……」
「もし、この部屋で寝たいならオレと須藤の間で寝てください」
「お前!遠まわしに自分の方がオイラより背え高いの自慢してんだろっ!? しかも!なんでオイラがお前なんかの隣で寝なきゃならないんだ!うえ!気持ち悪っ!!」
「気持ち悪くて結構です。 なら、ご自分の部屋に戻ってください」
「うわ!お前春吉の番犬か? あ、それとも自分が春吉の隣で寝たいの?」
「んなっ!? 別にそういうわけじゃ……!」
「うっそ!図星!? この犬マジキモっ!むっつりかよ!! な、こいつ気持ち悪いなー春吉―?」
「ち、違うんだ!大門!! いや、違うってのはお前の隣が嫌ってんじゃなくてだな…」
「柴君は…、気持ち悪くないですよ……先輩」
「え、春吉?」
 





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