献上品

□ここはオレの場所
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おまけ

布団にもぐりこんだものの、春吉は寝付けずにいた。しばらく柴が鼻をすする音がしていたが、それがやむと照明を落とした部屋は完全に静まり返る。
須藤はまだ寝息の聞こえない春吉に静かに話しかけた。
「もう寝たか?」
「……まだ」
「明日も早いしきついぞ。 それに、早く寝ないと背も伸びない」
「……わかってる」
「背、小さいの気にしてんのか? お前の武器はほかにあんだろ」
「……わかってるよ」

仕方ないやつ、と須藤は自分の布団から隣の春吉の布団に移った。
「ちょっと! なんでボクの布団に入って来てんのっ!?」
「あいつらバカのせいでなかなか布団に入れなかったから湯冷めした」
「だからって!」
「あ。お前、湯たんぽにちょうどいい。 サイズ的に」
それまで、布団の中でばたばたともがいていた春吉が動かなくなった。 というか、脱力したらしい。
「須藤君まで酷い…。 ああ、だからボクの隣がよかったのか」
「いや、お前の隣はオレの場所だろ」
「……」
「背なんてな、普通にしてりゃそのうち伸びる。男の成長期は高校なんだぞ」
「……うん」
「もう、おれは寝る」

須藤君は本当に優しいなと春吉は暗くてよく見えない須藤の寝顔を見つめる。
不器用だけど優しい。
「おやすみ」

今度は穏やかに眠りにつけた。







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