企画部屋

□甘美なキミ
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その躯のどこに入れる気だ、と問いたいくらいほどの名前には不釣り合いな菓子の山が目の前に広がっていた。
甘い物をあまり好まない俺にしてみたら一つ食べるだけで充分だというのに。


「…なぁ、名前」
「なに?」
「これ、全部食う気か?」
「今日だけじゃ無理だけど、ちゃんと食べるよ?」


チョコレートの箱片手に小首を傾げてこっちを見つめてきやがった。
…可愛いじゃねーの。


「これなんかね、すっごく美味しいって評判いいのー」


チョコレートの包装紙を開けて、それを口に入れると幸せそうな顔をした。
本当に甘いもん好きだな…。


「美味いか?」
「うん!甘すぎず苦すぎずでちょうどいい甘さだよ」


そう感想を述べた名前は残りを食べ始めた。
…食ってるの邪魔するのも何だから、話し掛けるのは止めとくか。










あれから、一時間と少し経った頃。
漸く、名前の手が止まった。


「ふぅ。美味しかったー」
「よかったな」
「うん。んー、満足満足」


俺の横でにこにことしながらそう言うと、名前は未開封の残った菓子を纏めた。
…これは、減った…のか?


「ねぇ、景吾ってどうして甘いの苦手なの?」
「判らないが、名前みたいにあんなに食いてぇとは思わないな」


俺が喉で笑うと、名前が拗ねたように少し頬を膨らませた。
これまた可愛いじゃねぇか。


「でも、あたしって食べ過ぎなのかなぁ。食べ過ぎたら太っちゃうよね…」


嫌にしんみりと考え出したが、名前はそんなこと気にする必要ねぇ。
充分いい女だしな。


「まあいいんじゃねぇの?菓子食ってる時の名前、可愛いぜ?」
「…景吾がそう言ってくれるならそれでいいかな」


俺の言葉に上機嫌になった名前は俺の腕に自分の腕を絡めて来た。
…フッ、最高だな、この体勢。


「俺からしてみりゃ、何しててもお前は愛おしいけどな」
「景吾も何しててもかっこいいよ。あ、でもテニスしてる時は特別かっこいい!」


そんなことを無邪気に言ってくれた名前。
俺以上の言葉を返してくる名前に、俺はいつも翻弄されっぱなしな気がする。
……それはそれで悪くないが。


「…愛してるぜ名前」
「あたしもだよ、景吾」


名前が言い終わったのと同時にした口付けは、想像以上に甘かった。




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