企画部屋

□改めまして
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昨日は蓮二が休みだった。
遠征での試合があったから蓮二はいなかったから。
昨日一日のノートを見せて欲しいと頼まれたのだった。


(これで大丈夫なのかな…?)


ノートを綺麗に書くことはあんまり得意じゃない。
だから蓮二みたいにきちんと纏めることなんか、もってのほか。


(ぜっっったい見づらいよねー…)


何色かのペンで重要な所を目立たせて、他は必死に今までで一番丁寧な字で書いた。
…だって、彼氏よりノートが微妙って、嫌だし…。


「名前」
「れ、蓮二!(しまったっ…!声裏返ったっ…)」


あたしの横にある椅子に座ると蓮二が少し申し訳なさそうな顔をしていた。
声、気にしてないみたいでよかった……。


「すまなかったな、待たせて」
「全然大丈夫だよ。それより、部活は…」
「今日は昨日の反省を兼ねたミーティングだけだったからもう終わったんだ」
「そっか。ならよかった。…これ、昨日のノート」
「あぁ、ありがとう」


蓮二が一番上の科目のノートを開いた。
すぐに判るように付箋、張っといたんだけど…。
他のページも見てないっ…!?


「あ、あの、蓮二っ」
「綺麗なノートだな。随分と見易い」
「…本当、に…?」
「要点に色が付いてすぐに目に入る。それに、この辺りは板書にはなかったことじゃないか?」


蓮二が指先で示した所は確かに先生が口頭で説明しただけのことだった。
そのくらいしか出来ないんだけどな…あたし。


「こうすることは難しいだろ?よく頑張っているんだな、名前」


蓮二に優しく頭を撫でられて、ついはにかんだ。
何だか、褒めてもらうの…嬉しいかも…。


「やっと笑ったな」
「え?」
「今日は何だか緊張していたみたいだったからな」
「え、えっと、そんなことは…」
「あんまり見られない分、可愛いかったぞ」


蓮二はさらりとそう言って、ノートを鞄に仕舞うと手を差し出してくれた。
その手を取って、教室を後にする。
何でこんなにクールでいられるんだろ…。
ちょっとくらい、焦ったりしないかな…?


「蓮二」
「なんだ?」

「………好き、だよ」
「俺も名前が好きだ。誰よりもな」


…結局またクールに返された。
でも、そんな蓮二の隣りが心地いい気がするんだよね。
繋いでいる手に少し力を入れると蓮二も少しキュッと力を強めてくれた。
…そんな貴方が、誰よりも好きなんだと自覚した初夏のこと。



改めまして


やっぱり貴方が大好きでした。




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