企画部屋

□夜が明けたら
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「名前、疲れたでしょ。もう寝ていいよ」
「まだ大丈夫……」


日付は何時間か前に変わってた。
今は事も終えて、睡魔があたしを襲っている。
まだ寝たくないのにな…。


「でも、今日は無理させちゃったしさ。眠いなら無理しなくていいんだよ?」
「へーきだってー…。」


こんな間延びした返事じゃ萩之介も寝ろって言うに決まってるのに。
重たくなってきた瞼を必死で開けてみると、優しく微笑んでる萩之介が見えた。
あたしの髪を撫でながら、じっとあたしを見てる萩之介が。


「そんなに見られてたら寝れないよ…」
「寝ないって言ったのに?」
「それとこれは別なのー」


萩之介に擦り寄って言い訳をすると、頭上からくすくすと笑う声が降って来た。
……また子供っぽいって思ってるな…。


「名前。ありがとね」
「なにが?」
「昨日からずっと傍にいてくれて」


すごく嬉しいよ。
そう言うと髪を撫でていた手で私を抱き締めた。
……萩之介、あったかい…。
引っ込みかけた眠気が振り返し始める。


「それくらい、いつでもするよ?萩之介が喜んでくれるなら」
「お、また嬉しいこと言ってくれるね」
「でしょ?萩之介が喜ぶことくらいあたしには判るもん」


得意げに言ったのに、何故かその後に口からこぼれたのは噛み殺すことのできなかったあくび。
ああもう空気読もうよ、眠気…。


「やっぱり眠いなら寝なよ。無理して起きなくていいから」
「でも…」
「俺の誕生日、まだ始まったばっかりだから起きたらまた祝って?」
「ん……」


萩之介がそうまで言ってくれるから、あたしは限界まで我慢した眠気に身を任せることにした。
あ…、でも最後に一言……。


「誕生日……おめでと…。萩之介…」


遠くで萩之介が優しい声音で、ありがとうって言ってくれた気がした。




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