企画部屋

□Heat in midwinter
1ページ/1ページ



なんじゃろう。
今日の名前。
いつも以上に俺に甘えてきちょる……。

俺の横でふにゃふにゃと笑っている名前はいつになく可愛らしい。
それはいいんじゃけど、あまりに違い過ぎて本当に名前か疑いたくなるの…。
いや、いつも可愛いぜよ?
なんか、雰囲気が違う気が……。


「雅治ーー」
「なんじゃ?もう眠か?」
「違うよー。お誕生日、おめでとう」
「なん。もう日付変わったんか」
「うん。だから、おめでとう」


また表情をへにゃっ、と柔らかく崩すと腕に抱き着いてきよった。
…ほんに可愛いのう。


「プレゼント、ちゃんと用意したの。…受け取ってくれる?」
「名前がくれるならなんでもよか」
「ならよかった。はい、プレゼント」


渡された紙袋を受け取って中身を出そうとすると、名前が俺の腕を止めた。
名前を見ると、大きな瞳で俺を見つめていた。
……さっきからなんかおかしいとは思っとったけどもしや…。


「名前。もしかして熱、あるんじゃなか?」
「ないよ。雅治の誕生日に熱出すわけ…」
「じゃあおでこ貸しんしゃい」
「………いや」


俺が名前に触れようとした途端、腕に回していた手を振りほどいて後退りしよった。
……絶対具合悪いんじゃろ…。


「はよう来んしゃい。熱あるか診るだけぜよ」
「ないもん。熱なんか、ない」
「ないんじゃったらおでこ出せるじゃろ?」
「………あい」


観念したのか傍に戻って来た名前の額に俺の額をくっつけてみるとひどく熱い。
微熱レベルじゃないの…。
間違いなく本格的に風邪引いちょる。


「やっぱり熱あるぜよ。もう寝んしゃい」
「雅治と一緒に居るもん…」
「俺は傍に居るから心配せんくてよかよ」
「いや…!今日はずっと一緒に居るの…」


ついに泣き出した名前は俺に抱き着いて胸に顔を埋めると、いやだいやだと、そればかり繰り返しよった。
風邪引くと人が恋しくなるって言うしの。
それはすごく嬉しいんじゃけど、名前がこれ以上辛くなったら俺が嫌じゃし、寝かしつけんと…。


「名前、俺も一緒に寝るけぇ安心しんしゃい」
「……本当?」
「本当じゃ。寂しくならんようにずっとぎゅぅって抱いててやるから一緒に寝んか?」
「………じゃあ、寝る…」


背中を摩りながらゆっくり言うと、納得してくれたんか涙に濡れた顔を手で擦っていた。
思いのほか、すぐに聞いてくれてよかったぜよ…。

名前は眠ろうと決めたら眠気が襲って来たんか、俺の腕ん中でうとうとし始めた。
熱があるし、歩かせるのも可哀相じゃったからお姫様だっこをしてやった。
名前はもう眠りかけとって、無防備な顔をしとる。
……風邪じゃなかったらぺろりと食べたかったの…。
ベッドに名前を寝かせて俺も横に寝ると、名前が小さく声を出した。
目線を向けると、若干辛そうな顔で俺を呼んだ。


「雅治…」
「ん?大丈夫じゃよ。おやすみ」
「おやすみ…」


最後に微かに笑うと、すぐに目を閉じた。
寝息を聞いてると辛そうに呼吸しとるから、氷枕とか持って来んとな。
そっと離れようとしたら俺の服を握っとって、その手を剥がしたくなくなった。
やけど、熱下げてやらんといけんからその手をゆっくりと外す。

戻って来たら約束通りぎゅぅ、って抱いて寝ちゃるから、もう少しだけ頑張っての。
熱で大分熱くなった額にキスをして、俺は部屋を出た。

名前がおったら他はどんなことがあったって構わんきに、はよう元気になりんしゃい。
……愛しとうよ、名前。




.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ