企画部屋

□何があっても、変わらない
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はっぴーばーすでぃ!

なんて明るい声で言われたのは夜中の0時ちょうどだった。
それは、すげー嬉しかったんだけどよ……。


「……名前。これ、どうしたんだ?」
「仁王がね、ブンちゃんが絶対喜ぶから誕生日プレゼントにあげてって言ってたから預かったの」


きゅるん、とした可愛い目をして名前が丁寧に説明してくれた。
ってか、やっぱり仁王からかよっ!
あの白髪詐欺師…!!
今度俺の妙技で痛い目見せてやるぜぃ!


「嫌なのだったりしたの?」
「いいや、全然!こ、今度使うぜ!」
「そ?ならよかったね。後、あたしは約束通りケーキ作ったよ。……あんまり自信ないんだけどね。ちょっと待ってて」


名前がケーキを取りに行ってくれたのを確認して、俺は一つ溜め息を吐いた。
ちなみに、ベタにメイド服とかそういうのを仁王がくれたわけじゃねぇ。
名前には何一つ害はねぇ物だし。


「はい、お待たせー」
「お!タルトじゃん!」
「へへー、ちょっと頑張っちゃったー」
「ちょー美味そう!食っていいかっ?」
「もちろん。ブンちゃんのために焼いたんだから、ブンちゃんが全部食べていいよ」
「サンキュー!んじゃ、いただきまーす!」


大きく一口食べると、ほどよい甘さが口に広がった。
さっすが、俺の名前!


「美味いっ!!」
「よかったー。あ、仁王からのプレゼント見ていい?」
「ぐむっ……!!や、止めとけって!」
「別に大丈夫だよー。ちょっと失礼ー……」


紙袋を覗いた名前の動きが完璧に固まった。
そりゃあもう面白いくらいに。


「………ブンちゃん」
「……何だよ?」
「ブンちゃんって、……コスすんの?」
「しねぇよ!何だって俺がそんなことすんだよ!」
「えー…。残念。あたしと一緒にやってくれると思ったのに」


…………今、名前何て言った?
『あたしと一緒にやってくれると思った』?
ってことはまさか………。
心の中で浮かび上がった結論を必死に否定する。
いやいやいや………。
だって、名前がコスプレとかするはず………。


「んー、このウィッグだと柳くん出来るね。あたし、赤也くんに似たのなら持ってるからブンちゃんとダブルスしてみたいのに」
「……ウィッグ、持ってんのか?」
「うん。ブンちゃんみたいなのもあるよ。あれ?あたし、レイヤーだって言ってなかった?」
「聞いてねぇよ、そんなこと……」


考えが甘かった、としか言えなかった。
名前が作ってくれたタルトなんか比べ物にならねぇくらいに。
そんな素振り、微塵も見せなかったと思うんだけどな…。


「で、いつからやってんだよ?」
「えっーと、いつからかなぁ。一年…は経ってないかな」
「あー……。そうか」
「最近忙しくてやってなかったしねー。ねぇ、ブンちゃん」
「ん?」
「………レイヤーのあたしは、嫌い…?」


名前に目を向けると、すげぇ哀しそうな顔をしていた。
……馬鹿だ、俺。
名前がレイヤーだか何だか知らねぇけど、名前は名前だ。
俺にとって、大切で愛しい存在だというのは変わらないのに。


「嫌いなわけ、ねぇだろぃ。そんなんで、嫌いにならねぇよ」
「……本当に?」
「あぁ。俺、名前には嘘吐かねぇよ」
「…ありがとう、ブンちゃん」


ぎゅう、と抱き着いて来た名前の背中に手を回した。
むしろろ名前のこと、また一つ知れてよかったぜ…。



何があっても、変わらない


やっぱり、名前が一番愛しいと判った。
…若干仁王には感謝したなんて、誰にも言わねぇけど。




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