氷帝

□Lying to love
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キツい陽射しが容赦なく照りつけている今日この頃。
…さすがに今日は暑すぎる…。


「またぼーっとしとる」
「…忍足…」


小さなうちわで風を送っていた私に声を掛けたのは、伊達眼鏡がよく似合う忍足侑士。
ちなみに彼氏ではない、ただのオトモダチ。


「なんやねん、その気ぃ抜けた返事は」
「暑いんだから仕方ないじゃん。ってか…くっつかないでよ…」


こんなに暑いってのにあろうことか、後ろから抱き着いてきた。
あぁ…あっつい…。


「抱き着くならあたし以外にしてよ…。暑くて死ぬから」
「嫌や。名前、抱き心地ええんやもん」「そういうこと言うなっての。しかも…もん、とかフツーにキモいし…」


これだけ冷たく当たってるんだから。
早くどっかに行ってちょうだい。
…あたしが辛いばかりだし。


「なー名前。名前は俺んこと嫌い?」
「……嫌いだよ。何回言わせるの」
「…俺はそれでも名前が好きやけどな」

そう私の耳元で囁いた忍足。
こいつはあたしの心を殺すつもりなの?
そんな言葉を吐いて無責任にあたしから離れた忍足を見上げた。


「そないな熱い視線で見られとったら俺かて照れるわ。せやから見つめんといて?」
「誰がそんな風に見てるってのよ。バカバカしい。自意識過剰すぎ」


あたしのその言葉と同時に、誰かに呼ばれて忍足は私に背を向けようとして苦笑した。
まだ何か言う気なの?


「呼ばれてもうたわ。堪忍な」
「謝る必要ないし。早く行けば?」


あたしが吐き捨てるかのように言うと、教室から出て行った。
そのまま帰って来なきゃいいのに。
あたしなんかに構わないで、他の誰かとくっついちゃえばいいのに。
そんな言葉ばかりが渦を巻く。
こんなあたし、嫌いになってよ。
そうしたらあたしも、あんたなんか嫌いになるから。



Lying to love


そうしてあたしは大好きな貴方に嘘を吐く。




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