立海

□最上級のお守り
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目的のホームに降りると冷たい空気が肺を満たした。
隣りにいる雅治の手をぎゅぅ、と握ったのはそれと殆ど同時。
緊張、する。


「……雅治」
「どうかしたんか?」
「今日、上手くいく…かな」


言葉が上手く紡げない。
頭の中で最悪のシナリオがぐるぐると回ってる。


「大丈夫じゃよ。一緒に頑張ったきに、何も心配することなか」
「、で、でも、あたし、本番に弱いし……」


あたしはいつもそう。
大事なテストの日に体調を壊すのはは当たり前。
テスト中に頭を真っ白にすることもしばしばあった。


「落ち着いて解くんじゃよ。そうしたら、ちゃぁんと出来るからの」


柔らかく笑んだ雅治は空いている手でポケットから何か取り出した。
すっ、と差し出されたのは綺麗な白のお守り。


「お守り、わざわざ買ってきてくれたの?」
「おん。これで頑張れるじゃろ?」


繋いでいた手を解いておまもりを受け取ると、雅治が優しく手を包んでくれた。
その温もりに少し、ほっとする。


「あたし、絶対合格するね」
「楽しみにしとるよ。一緒に大学行くの」
「あたしもだよ。……じゃあ、行って来るね」
「ん。いってらっしゃい」


雅治の声に背中を押されるように、あたしは会場に向かった。
お守りを、握り締めて。



最上級のお守り


(お疲れさん。よう頑張ったの)
(ま、雅治…!?ずっと居たの!?)
(当たり前じゃろ?さ、帰るぜよ)


いつもと変わりなく迎え入れてくれた雅治に気持ちが安らいだのは言うまでもなかった。




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