立海

□君に夢中で前が見えない!
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クールビューティって美しいのう……。



「……仁王」
「…なんじゃ?」
「お前、見すぎだろ」
「今更じゃろ。あああ!見てみんしゃい、ブン太!名前のあのプレイ!最高じゃ…」


横でドン引いてくブン太を無視して、名前だけを目で追う。
あぁ…、綺麗なパスじゃ…。


『おーい、仁王。そんなに窓の外ばかり見てるなら、問3の答え言えるよな?』
「△ABDと△ACDにおいて、仮定よりAB=AC、∠BAD=∠CADは等しい。
ADは共通の辺。従って、2辺とその間の角がそれぞれ等しいから、△ABD≡△ACD。Q.E.D.」
『………正解だ』


教室がざわついたけど、関係なか。
数学得意の俺には証明問題なんて朝飯前じゃし。
数学より名前が大事ぜよ。


(ああ綺麗じゃ。動くだけで何であんなにも綺麗なんじゃろ。あ、名前がこっち見とる!)


それだけでも充分嬉しいのに、何か言っとる。
読唇術で読みとっちゃるよ、名前!


(ま・え・む・け。へ・ん・た・い)
(……名前が俺のこと見てくれるんじゃったら変態呼ばわりされても構わんの)


真剣にそんな風に考えちょると、名前が勢いよく親指を下に向けた。
以心伝心しとる!
俺、今この場で死んでもよか!


「先生ー。仁王が悶絶してまーす」
『ほっとけ、丸井。次の例題やるぞー』


今すぐ名前に会いに行きたい!
と言うより会わせんしゃい!
もう我慢出来ん!


「先生、腹痛いから保健室行ってきます」
『全然元気そうに見えるぞ、仁王』
「もう駄目。俺の中で何かが破裂する。ってなわけで抜けます」


俺は名前に会いたいだけ。
その一心で教室を飛び出して、校庭に向かって走った。



君に夢中で前が見えない!


この後、俺はグラウンドと仲良しになった。
…名前の正拳突き、見事じゃった…。



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