立海

□沸点37℃
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最近、におーに触れたりすると、顔が見られなくなった。
それで、すぐに恋したって判ったの。
でもあたし、惚れっぽいから口には出さない。
迷惑掛けたら悪いから。
こんな、一時の感情で。


「あ、あたしのナタデココジュース」
「ん。美味か。意外にイケるの、ナタデココ」
「楽しみにしてたのにー」
「ぼーっとしとる名前が悪い」


そう言ってまた一口あたしの大事なナタデココジュースを飲むにおー。
しかも、期間限定。
あんまり置いてないのやつなのに、マンゴージュースのナタデココ。


「におー」
「なんじゃ?飲んだモンは返せんよ」
「別にもういいよーっだ。あたし寝るから」


寝てるうちにジュース全部飲んで。
間接ちゅーくらいでドキドキするなんて、小学生以下だもの。


「拗ねるんじゃなか」
「拗ねてないー」
「……ジュース全部飲んじゃる」
「どうぞご勝手にー」


あたしのその言葉を聞くなり、目をぱちぱちさせるにおー。
そういえばあたしが誰かに物上げるの、初めてだ。


「頭、打ったん?」
「打ってない」
「んじゃ沸いた?」
「沸いてない」
「………じゃあ、俺に恋しとる?」


におーの唐突な言葉にひゅっ、と息が詰まった。
何で判ったの?
あたし、何もしてないのに。


「図星?」
「、ちがう。におーになんて恋しない」
「違うんじゃったら俺の顔見れるじゃろ?」
「見れるよっ!」


心の中で自分に声を掛けてにおーの方を向こうとする前に、におーの手で顔を動かされた。
瞬間口に触れたのは、におーのそれで。
離れ際にごちそうさん、なんて言われた。
今、あたしはちゅーされたんだって、教室のざわめきで理解。
え、まじで?
におーとちゅー、しちゃった?


「今、ちゅー、した?」
「ちゅーした。唇、柔らかいんじゃなー。ぷにっ、ってしたぜよ」
「におー、あたしのこと、」
「好きじゃよ。多分、名前が想像しとる以上にのう」


くくっ、と笑うにおーを見て顔に熱が集まるのが判る。
でもあたし、惚れっぽいから長続きしないよ。


「続かせちゃる。というか、俺以外好きになれんくしちゃるし」
「何で、」
「声出とるから」
「うそ」
「ま、よろしくな」


そんなこんなでにおーと付き合うことになった……らしい。
でも、本当に何となくだけど。
熱は冷めてくれそうにない気がした。



沸点37゚C


におーといると常に躯が熱い。
どきどき、してばかりだから。




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