立海

□指定外は一人分で−ver.Y−
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外は茹だるほどの暑さだというのに。
この教室は如何せん寒すぎやしないだろうか。


「さっむーい……」
「やはりそう思うか」
「思わない方がおかしいよー。鳥肌すごいし」


制服から覗く名前の腕は確かに寒さに反応していた。
そっ、と手を掬ってみればこれまた冷たい。
………冷房、本気で消してこようか。


「もう駄目、あたし外行く」
「…名前、少し待っていてくれないか?」
「ん。判ったー」


確か以前持って来たままロッカーにいれていたはず。
俺はともかく、名前は温まるだろう。……いや、これなら俺も温まれるか。


「ほら、これを着れば少しは大丈夫だろう?」
「わ…何で持ってるの?ってか、あたしが使ったら蓮二寒いままじゃない」
「構わない。いい方法を思い付いたからな」


名前にそれを押し付けると、何だかんだ言いながら嬉しそうに着てくれた。
グレーのカーディガンは名前には大分大きいようだが。


「ぶかぶかー。でも温いー」
「ならいい。女性が躯を冷やすのは良くないからな」
「ありがとう。あ、蓮二は寒いよね。外行こ」


教室から出ようと俺に背中を向けた名前を後ろから抱き竦める。
そのまま席に座り、名前を膝に乗せた。


「……あのー、柳クン?」
「何だ?」
「外、行かないの?」
「あぁ、これで充分温かいからな」


腹部に回したままの腕に力を込めると、観念したのか俺に躯を預けて来た。
予想通り、いい方法で二人共温まれて顔が緩む。


「何かさー、クラスの視線が痛いと思うのはあたしだけかなー?」
「何のことだ?俺達をそんな風に見る奴なんているわけないだろう、な?」


僅かに眼を開いて、周囲を見廻す。
空気の読めるクラスメートで助かるな。


「……蓮二、みんなのこと脅しちゃ駄目だよ」
「何もしてないぞ。名前を抱き締める以外はな」


俺にされるがままになっている名前も満更でもないのだろう。
片手で名前の髪を梳きながら、一人口角を上げた。




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