立海

□秘密にならない秘密話
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「名前って、オヤジ好き?」
「、は?」


部活が終わり、着替え終えてペットボトルの紅茶を飲んでいた幸村が急にそう尋ねてきた。
なんて失礼なことを訊いてくるんだ、こいつは。


「意味が判んないんだけど」
「だって、じゃなきゃ真田みたいなのと付き合うなんて考えらんないだけど」
「そうっスよ!名前先輩ならもっといい人選べますって!」
「ちょっと、何で赤也まで便乗してきてるのよ」


黙っていれば言いたい放題じゃないの。
挙げ句、面白そうだと思ったのかブン太も仁王も加わってるし。
めんどーなんですけど、マジで。


「本当に何で真田がいいの?ねぇ、俺にしなよ。名前」
「やーよ。幸村怖いもの」
「ふふっ、俺にそう言えるのは名前だけだよ」
「どーも。とにかく、みんなが何と言おうとあたしは真田がいいの。判った?」


あたしがそう言ってるのに皆は真田はヤメロの繰り返し。
むしろ真田の何がいけないのか教えてほしいんだけど。


「みんなさぁ、外見だけで物言うのよくないよ」
「お、真田が老けてるってのは認めるんか?」
「まあアンタたちに比べたら確かに老けてるかもしれないけど。結構いいとこあるんだよ、真田」
「名前、夢でも見てるんじゃねぇ?」


ケラケラと大笑いするブン太に睨みを利かせる。
全く、失礼にもほどがあるわ。


「大体、顔がよくても性格破綻してたら嫌じゃない」
「あー確かにそれはあるのう」
「でしょ?だからあたしは真田がいいの」
「そっか。……あーあ、何だか名前に言い負かされた気がするよ」
「真田のことに関しては譲らないよ。あ、でも、このこと真田には言わないでよ?」


今、真田は部室にいない。
職員室に用があるとかで、部誌の提出も兼ねて出て行ったから。
そうでもないと恥ずかしくて真田のこと褒められるわけないじゃない。


「じゃああたし帰るね」
「副部長のこと待たなくていいんスか?」
「うん。この後買い物して帰るって伝えてあるし。くれぐれもさっきの話、言わないでね」
「判ってる。名前、気をつけて帰るんだよ」
「ありがと。じゃあお先に」


ぱたん、と名前がドアを閉めた数秒後。
入れ違いのように真田が部室のドアを開けた。
その顔は、耳まで真っ赤に染まっている。


「よかったね、真田。名前の本音が聞けて」
「あ、ああ」


名前がツンデレだなんて今に始まったことなのに。
気持ち悪いくらい自信をなくしてたからね、真田。
外で立ち聞きしてるように言ってやったんだ。


「お前と付き合う前からあんな性格だって判ってるのに不安がるなんて。大馬鹿者もいいところだよ」
「……すまん」


肩を落とした真田は黙々と帰り支度を始めた。
さてと、俺も帰らないとね。


「あ、約束通り明日はメニュー二倍だよ」
「うむ。二言はない」


……こういう男らしいとこが名前は好きなんじゃないのかな、きっと。
まぁ、絶対真田には教えてやらないけど。




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