企画部屋
□過去拍手
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「あたしってさ、パッツンと今のどっちがいいと思う?」
分けてある前髪を弄りながら名前がそう問い掛けた相手はブン太だった。
突然話を振られ、ブン太は返答に困ったがパンッとガムを割るとすぐに口を開いた。
「今のままがいいんじゃねぇ?」
「でも飽きちゃったんだよね、これ」
自分の前髪をしげしげと見つめると名前は盛大な溜め息を吐いた。
前髪一つに随分と悩んでいるようだ。
「で、パッツンにしようってか?」
「そ。……ってかさ、ブン太はどんな髪型のあたしがいい?」
「俺の好みの髪型?」
ブン太の言葉に頷いた名前を見て、ブン太は悩み始めた。
あれだけ名前が考えてるんだから、まともな答えを出そうとブン太は思ったのだ。
それに、自分の彼女が小さなことですら相談してくれるのがブン太には嬉しかった。
「……………」
「…ブン太?そんなに真剣に悩まなくていいよ?たかがあたしの前髪で」
「いーや、名前がもっと可愛くなるんだったら俺はいつまでだって悩むぜぃ」
「…ありがと」
微かに赤くなった頬を隠すように自分の髪を指で梳いたりし始めた名前。
それをちらりと見たブン太は嬉しそうに微笑むと、何か思いついたような表情を浮かべた。
「なぁ、今ってお揃いで何持ってるっけ?」
「え?えっと…確か、ケータイのストラップとこれじゃない?」
名前は自分の左手をブン太に見えるように上げた。
その左手にある装飾品はただ一つ。
薬指に嵌められている銀色に光る指輪のみである。
「だよな。じゃあ、一つ提案」
「何?いい髪型思い付いたの?」
期待に満ちた瞳で自分を見る名前に、ブン太は得意げな笑顔で結論を口にした。
「前髪もお揃いにしてみねぇ?」
−キミと同じでいたいから−
(あー…それはないわ)
(いやいやいや、ぜってぇ似合うからやろうぜぃ!)
………少し、伝わりにくいみたいだけど。
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