long story

□想いの行方(鰤/日⇔乱+ギン⇔イヅ)
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「あんた、仕事どうしたのよ」

「心配あらへんて。今頃イヅルがやってくれるとるよ」


そんな会話が交わされる執務室で、とうとう俺は筆を止めた。


そう、執務室。ここは執務室のはずだ。しかも十番隊の隊舎内。

松本のサボリ癖は今更言うまでもないことで、奴がここに入り浸るのもそろそろ日常茶飯事と化してきた。

奴とは言わずもがな…三番隊隊長、市丸ギン。松本の幼馴染み。


「あら、隊長。休憩ですか?すぐお茶入れますね。今日のおやつは南三条に新しく出来た和菓子屋の柏餅ですよ」

にこやかに言う松本に、もはや溜め息しか出ない。

「…お前の休憩は、いつになったら終わるんだ…」


俺の体に余りある椅子から降りて、処理済みの書類を抱える。

「お前もだ、市丸。今日締め切りの書類、どうせ終わってないんだろうが。隊長の決裁が必要な書類は吉良には出来ねぇぞ。あいつ泣いてんじゃねーのか?」

悲しいことに、吉良の気持ちは痛いほどよく分かる。市丸を連れ戻しに来る吉良の顔を見るたびに、思わず同情する。


「ん?んー……頑張りや、イヅル!」


ここにいない副官に激励を贈るふざけた隊長など、護廷…いや、尸魂界広しと言えど、こいつしかしないだろう。

「あんたねー…そんなこと言うくらいなら、帰ってやりなさいよ」

「ええやん。ボクかてゆっくり休みたい日くらいあるんやで?」

「いつもだろ」

「酷っ!乱菊ぅ〜…十番隊長はんがいじめる〜」

「知らなーい」


言いながら饅頭を頬張る松本に、叱るべきかと逡巡する。仕事をサボることにかけては一級品の二人だ。体力を無駄に消耗するだけだろう。



最近は特に仕事が多い。怒鳴るよりも先に筆を動かしたほうが効率がいい。何より今近付いて来ている霊圧が、このやるせなさの元凶の片割れを取り除いてくれそうだ。


「俺はこの書類を十三番隊に回してくる。この書類は三番隊だから、渡しておくぞ。松本、留守を頼む」


数枚の書類を市丸に押し付け、執務室を出る。

松本の間延びした声が返事をしたが、仕事をしてくれることは期待していない。今日も残業かと思うと気が滅入る。



どうしてこんなに仕事があるんですかぁ!隊長の鬼ー!


数時間後に聞くだろう言葉が脳裏に浮かび、廊下を進みながら再び溜め息ついた。



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