たいとる
□ありがとう(日乱)
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煎れたばかりのお茶を一口飲んで、熱い湯呑みを両手で包む。
窓の外は雪がちらついていて、雲がまた太陽を隠してしまっている。
「寒ーい」
呟いてみる。
真っ白い息が寒さを倍増させているような気がした。
そろそろ隊首会が終わる頃のはず。
雪のように白く、氷のように凍てついた霊圧を操る彼が、戻って来る。
氷雪系最強の斬魄刀を持つ彼は、まるで冬の太陽のように暖かい。
彼の仏頂面が、早く見たい。
幸い、仕事はほとんど終わっている。緊急事態も起こっていない。
これなら、計画通り午後から非番にしてあげることができる。
「少しは休んでもらわないと…ね」
トップが率先して動くものだと思っている彼は、いつだって私達より忙しくしている。
朝も夜も、冬も夏も。
休ませようとどれだけ隊員達と画策しても、中々それは叶わなくて。
けれど今日は、やっと休ませてあげられる。
「非番?」
「はい」
「いらねーよ。俺より他に回してやれ。このところ忙しかったしな」
「ダメですよお。隊長より休んでない子なんていませんから」
いらないと言うことは既に予想済み。
ここで引き下がる私じゃないし、引き下がってしまったら意味がない。
「強制的に休ませますからね」
「卯ノ花じゃあるまいし、休みを強制するなよ…」
「卯ノ花隊長の協力ならもう貰ってますよ。どうしても聞かなければ、白伏で休ませてあげましょうって言ってました」
あ、黙った。
さすがに卯ノ花隊長の言葉は効果があるわ。
「……分かった」
「本当ですか?」
「ああ、遠慮なく午後は休ませてもらう」
「はい、是非そうしてください!」
隊長の敗北宣言。
昼食後、里帰りをすると言ってくれた。
この頃は本当に寒くて、現世でも記録を更新し続けるほどの寒波が襲っていると聞いている。
きっと、おばあちゃんが心配だったはずなのに、隊長はそれをおくびにも出さない。
「あ、隊長。おばあちゃんにこれ、差し入れです」
「何だ?」
「この間の現世任務で、ついでに買ってきたんです。ストールと手袋と、耳当てに帽子に…半纏も。寒いですからね」
センスのいいお店で見つけた品々。
ストールは和柄で、おばあちゃんに似合いそうなものを選んだ。手袋は使い易さと温かさを重視。
我ながら、ナイスチョイス☆
「……ありがとう」
微笑んで、隊長は呟く。
寒さも吹き飛ばす、ほんのりした暖かさが胸に灯る。
だから私は、私達は。
そんな貴方について行きたいと思うのです。
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