その他

□自己に事故
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吉宗が門田の仕事場に付き合うことが珍しくなくなった数回目の訪問

いつものように仕事に打ち込む門田

その横でそんな門田と仕上がっていく仕事に熱中している吉宗

一息がついたところで門田は吉宗に振り返った

「なぁ、お前暇じゃないか?」

「そんなことないですよ」

思ったよりもだいぶ早かった返事に門田はきょとんと一瞬出遅れた

吉宗の口は続けて開かれる

「人の手で完成されていくものって好きなんです、見てて…その人の心とか感じるっていうか」

「…そうか」

吉宗の素直な感想に門田は頬を掻く。初めて彼をここに連れてきたときに狩沢につぶやかれた弟子、なんて言葉が蘇ってしまったのは気の所為ではなかった

「門田さんが作ってるって分かって見ているともっとそう思います」

「…褒めても何もでないぞ?」

「やだなぁ、そんなつもりないですよ」

些か素直すぎるのではないか、聞いてるこちらが耐えきれず恥ずかしくなってきた台詞に門田は誤魔化すように再び作業に入った

下の作業が終わり、脚立を出して上への作業へ入った時だった

ドカーン!と近くで何かが破壊された音が響いた

それに小さく体を揺らした門田の動きが不運なことに金具の取れかかった脚立へと響き、

「――っ門田さん!」

転倒、した

鈍い音を立て、重なりあった吉宗と門田の体

「っ痛……悪いな…三好…無事か?」

「は、はい……門田さんこそ大丈夫ですか?」

「いや、思いのほかお前がクッションになったおかげで…」

不運とは続くもので。門田が身を起こそうと、吉宗の頭の両脇に手をつき、つぶやいた時だった

「やっほードタチン〜ヨシヨシ〜仕事はかどってるー?」

「さっき上でいつもの如く戦争コンビの喧嘩が激しかったっすけど、驚きませんでした……か?」

狩沢と遊馬崎の登場に門田と吉宗は目を向ける。そして当然のことで狩沢と遊馬崎も門田と吉宗に目を向けている

そう彼らは見つめ合っていた

傍から見れば門田に押し倒された吉宗と、吉宗を押し倒しているような門田

差し入れを手に持った狩沢と遊馬崎

長い長い沈黙がそこに落ちた

「えっとー…」

初めに口を開いたのは、狩沢だった

狩沢が口を開いたことにとてつもない嫌な予感を感じ取った門田と遊馬崎

「ま、待てこれは…」

「分かった、とりあえず」

キャラ革命でも起きたのでは、とまで冷静な狩沢の声色に弁明しようとした門田は押さえられてしまった

「写メらせてください!!」

「違うだろぉおがぁあ!」

「ストップ!ストップっすよ!狩沢さぁあん!いたいけな少年の前っす!ここは自重をぉお!」

「黙って遊馬っち!今、私は全世界の腐なる女子たちの命運を手にしようとしてるのっ!」

「そんな命運手にするな!」

騒然とするその場に吉宗はたった一人完全に置いてかれた状況となり、慌てふためく門田を見上げることしかできない

「ヨシヨシィ!動いちゃだめよ!動いたら貴方は世界中の女の子を敵に回すことになるんだからねえ!」

「違うだろう!!」

「狩沢さーーーん!お願いだから戻ってきてくださぁああい!」

「(……とりあえず)」

門田がどけば済む問題なのだが、彼らが落ち着きを取り戻すまでは黙っていようと吉宗の本能はそう告げたのだった


END

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