頂き小説

□好きの大きさ
1ページ/4ページ

二年五組と六組の男子生徒が外での体育の授業を終えて校舎に戻る途中のこと。
「せんぱーい」
 グラウンドから少し離れたところから一際でかい声がする。
 何人かが声のする方を振り返るが、そのほとんどが興味なさそうにまたぞろぞろと校舎へ向かって行った。
「今日は大地達のクラスが当番なんだー」
 アツシが何気なくいった言葉に野球部員である市原・沢村・原田が足を止めた。
 大地の他に同級生であろう数名が固まっていて、その真ん中にはひときわ大きな牛が手綱に繋がっていた。牛の向こうには同じ野球部員の杉田の姿も見える。
 学校で飼育している牛が生徒に引き連れながら歩いているのは何も珍しいことではない。
 頭数は少ないが、学校で飼われている牛の飼育は毎年一年がすることになっている。
 牛が散歩して自由に放牧できる場所は飼育小屋から離れているため、時々当番の生徒達が手綱を握って移動をさせていた。
 杉田は小さく会釈しただけなのに対し、ブンブンと大きく手を振る大地の様子につい苦笑してしまう先輩達だ。
 どうにも子供っぽい行動が抜けきらないのが大地だ。
 もう少し落ち着きがあってもいいんじゃないかと誰もが思ってしまうのだが、それも大地っぽくねーなーなんて思ってしまい、結局はまっすぐで明るい性格についそんな仕種も気にならなくなってしまう。
「んあ、あの牛……」
 目をこらして牛を見た沢村が、何かに気づいた途端目を見開いた。
「やっぱそうだ。イ、イッチャン」
「イッチャンせんぱーい」
 ぶんぶんとまたも声をあげる大地に沢村はギョッと肩を震わせる。
「バカ大地っ」
「どしたサワ」
 原田が不思議そうに沢村を見た時だった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ