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□スタートラインC
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「俺は、バカですけど」
ふと漏らした言葉につられて、口が勝手に動く。自然と滑り出てくる言葉に、頭が追いつかない。
「バカだから、言われるまで分かんないスけど」
俺は先輩の顔をちゃんと見たくて、ゆっくりと立ち上がる。
すると先輩はうなだれて、両手のこぶしをぎゅっと握りしめた。
「でも、言ってくれたら」
絶対、
「先輩を一人にはしなかったっス」
見開かれた瞳が、俺を見つめた。
その張り詰めた表面に、ふわっと涙が浮かんだ、気がした。
けれどそれを確かめる間もなく、胸部に強い衝撃。
俺が後ろによろめいたその隙に、先輩が校門へ向かって走り出す。
どうやら俺は先輩に突き飛ばされたらしい、と気づいたときには俺はまた固い地面の上に尻餅をついていた。
校舎のかげに、先輩の姿が消えていく。
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