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□キリリク
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「ねぇねぇ仁王くん」


三、四人の女子に机を囲まれる状況はなかなか悪くない、男なら誰でもそう思うはずだ。

いつもなら俺だってそう思えた、が今日に限っては話は別だ。

斜め後方から突き刺さるような視線を感じる、振り返らなくても誰のものだかわかる辺り伊達に三年間も一緒に過ごしていない。


「昨日のあれ見た?すっごい可愛かったんだよ〜」


俺の心中を知らない女子が何か話題を振っているが俺は今それどころじゃない。

なんで怒っとるんじゃ…。

明らかに怒っているのだということは突き刺さる視線から伝わってきた、だがどうにも理由が思い浮かばない。


「仁王くんに似合いそうだなって思うものが売ってあったんだけど…」


今日はまだなんもしてないぜよ、朝練のときさりげなく柳生の腰に手を回そうとしたらブン太と赤也に後ろからボールぶつけられたんで未遂じゃし。


「今度部活が休みの日にあたし達と一緒に見に行かない?」


わからんのぅ、それが原因じゃないとしたら一体何に…。


「ねぇいいでしょー?」

「っと…」


腕を引かれて我に返ったのとほぼ同時に斜め後方からガタッという音が聞こえてきた。

もしかして、これに反応しとる…?

瞬間的に頭が回転しだした。

そうか、原因はこれだったんじゃな…ってことは。

つじつまが合致すると口元に笑みが浮かぶのを止められなかった。


「わかった、今度の休み楽しみにしとる」


女子のはしゃぐ声を聞きながら斜め後方を振り返るとそこにいたはずの相手は姿を消してしまっていた。

放課後部活で顔を合わせるのが楽しみぜよ…。





「また真田に怒鳴られるかもしれんのぅ」


遅刻は初めてではないので大体どうなるかはわかっている。

これぐらいなら、せいぜい説教がいいところ。

着替えを済ませテニスコートに向かうと練習は始まっていた。

上手く混ざれたら一番いいんじゃが…。


「仁王」

「…プリッ」


背後から聞こえてきた低い声に足を止めて観念する。

そう上手くはいかないのはわかっとったが…。

ゆっくりと振り返ると案の定そこには気迫に満ち溢れた表情の真田が。


「貴様よくも…!」


一瞬訳がわからなかった。

強烈に痛む頬を押さえて顔を上げると今まで見たことがない怒りを纏った真田が俺を睨みつけていた。

試合に負けてもこんな顔はしない、見たこともない。


「な、何す…」

「仁王お前って奴は…っ」


突如掴みかかってきたブン太も怒り狂った顔をしていて、状況が飲み込めない。


「何考えてんスか?有り得ねぇ」

「見損なったぜ…」


ブン太越しに冷ややかな視線をぶつけてくる赤也とジャッカルが見えた。

遅刻したぐらいでそんなこと言われる筋合いないぜよ!

そう言い返したかったが、できなかった。


「仁王、自分が何をしたかわかってるよね…?」

「今回ばかりはお前を許すわけにはいかないな」


微笑みながらも背後に真っ黒いオーラを醸し出している幸村と開眼した柳が立ちはだかっているから。

夢なら今すぐ覚めてほしい、夢ではないことは真田に殴られた頬の痛みが物語っているが。


「遅刻したんは悪かった、けど…」

「そんなことで謝る前に他に言うことがあるはずだよ」

「は…?」


遅刻が原因じゃなかったら他に何が…。


「比呂士泣かせといて何とぼけてんだよ!」


待て。


「それ、何かの間違いじゃ…」

「間違いじゃないっスよ、ほら」


赤也が指差した方向を見ると柳に寄り添われながら俯く柳生の姿が。

片手にはハンカチが握られていて、頭の中が真っ白になった。

三年間一緒に過ごしてきた中で柳生の涙なんて一度も見たことがなかった。

自分のしでかした事の重大性を理解した俺に残されているのはこれしかない。


「柳生!すまん俺が悪かったんじゃだから嫌いにならんでっ」


土下座。





End



5200>マコ様へ

解釈を、間違えてしまった気がしま…す……orz

苦情はいつでも受付ます、ご希望通りでなかったらすみませんm(__)m

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