短編
□俺のモノ
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「……ねぇ、待ってよ。…何で逃げるの?」
不思議そうな、その声。
この状況で、いたって平然なその声。
「っ…芥川、さん…!」
必至そうな、その声。
分からないという、その声。
嗚呼。何故、この人は俺を殺そうとするのだろう。
何故、何故、何故・・・・・・
愛し合っていた、筈なのに。
「つーかまえた♪」
芥川は、日吉に抱きつく。
この行為、普段なら大して気にするようなことではない。しかし、今は別だ。
今の日吉にとってその行動は、死を宣告されるより辛いこと。
この人は、自分を殺そうとしている
そう感じずにはいられないほど、芥川の目はオカシイ。
にっこり、という効果音が似合うその笑顔に悪意はなくて。
それでも、これからやろうとしているコトはとても残酷なことで。
これから、日吉を絶望へとつき堕とすことになる。