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□小さな一言
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グラウンドでは7、8名がキャッチボールをしていた。
ボールを目で追っていた監督らしい女の人に声をかけようとしたが、
「あ、の…」
中学時代、自分に重く圧し掛かった罵声や怒声が今にでも飛んでそうで、怯えた。
その思いが声に表れてしまった。
声は弱く微かで消えそうで、自分の野球に対する思いのようだった。
「入部希望者!?ポジションは?!」
しかし監督は俺に気づき耳に痛いぐらいの大声で、歓喜に溢れた顔で俺を見た。
俺の中の何かが音を立てて崩れさっていく気がした。
「ピッチャー…」
そして俺は野球部へ入部した。
それが惨劇の序章だなんて、誰も知らなかったんだ。