屋上相談室。

□三話 『藤宮の双子』
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ひたすら長い階段を駆け降りていた最中、知った声に呼び止められた。

『憂弥っ』

ふりむくとそこには―



やはり見知った顔が二つ。

『おはよう』

「あぁ…おはよう紅、紺」

憂弥は、少しホッとした顔で挨拶した。

藤宮紅(ふじみやこう)、紺(こん)。ちなみに性別は男。
名前からわかるとおり、この二人は双子である。
顔は本当にそっくりで、紅が髪を染めていなかったら、見分けるのは至難の業だ。
入学初日、まわりの勝手な評価ゆえに、クラスの誰もがただ遠巻きに見ていただけだった憂弥に
何の躊躇いもなく話しかけてきたのがこの双子だった。
それ以来、席(成績順)が憂弥を挟んで前後ということもあってか
ちょくちょくこの二人(とくに紅)は話しかけてくるようになった。
まぁ、朝と放課後くらいしか教室にいないのだが…
そんなこんなで憂弥は双子が嫌いではなかった。

「そんなに急いでどうした…??」

黒髪の方―紺が無表情で尋ねる。

「ぃや…朝から色々疲れたから…ちょっと寝に行こうかと…」
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