†鳳宍......................
□夜空に咲く。
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―夜空に咲く。
「夏といえばお祭りですよね!」
あまりにご機嫌な声で話しかけてくるものだから、無意識に隣にいる人の顔を見ると、爽やかさ満開の笑み。
いつも通り部活を終えて一緒に帰っていて、いつも通りたわいもない話をしていたのだが、長太郎がふと何かを思い出したように『あっ』と言ったものだから何かと思えばそんな話。
何をそんなに浮かれているんだ、俺達は大会前だろう、と呆れたような顔をしてみても、長太郎は浮かれていて気づかない。
「あのなぁ、俺らに休みなんかねぇだろ」
その言葉を聞いてか長太郎の足が止まったが、俺はさくさく歩いていこうとした。
が、追ってこない長太郎が気になって数歩程歩いた所で後ろを振り返ると、そこには想像していた落胆した悲しそうな顔ではなく、気味の悪いほどニコニコとした顔があった。
「やっぱり宍戸さん、聞いてなかったんだ」
意味あり気な言葉。
遠回しな言い方。
何処か偉そうな態度。
なんかそんなものが少し気に障り、軽く小突いてやったが、それでも手強くへらへらと笑っている。
「何なんだよ、早く言えよ」
思った通りだった優越感のようなものに満足したのか、やっと長太郎が口を開いた。
「一日だけ部活休みになったんですよ。次の金曜日、お祭りの日です。部活の最後、ミーティングで跡部さんが言ってました」
「あぁ…」
そう言われてみれば、跡部が何か言っていたような気はする。
『中学最後の夏休みの思い出に…(ゴニャゴニャ)…あーん?』…とかなんとか…
「そういうことです!なので、一緒に行きましょう!」
でかい体を左右に揺らして浮かれている様子を見たところ、奴は相当楽しみにしているらしい。
まぁ休みなんてそうそう無いし、せっかくの跡部の好意を無駄にする訳にもいかないか。(多分あいつ自身忍足と祭りに行く為なのだろうが)
「そうだな、行くか」
「ほ、本当ですか!やったぁ!じゃあ、当日は浴衣着ましょうね!宍戸さんには姉の浴衣を貸しますからv」
(え…)
すっと血の気が引き、冷や汗が流れた。
そんな話聞いてない!嫌だ!と身ぶり手振り全身を使って反論するが、今日の奴は手強かった。
「大丈夫です。姉の浴衣、赤色だから!」
宍戸さんもきっと気に入りますよー、と隠しきれていない下心を露に両手をとりぶんぶんと大きく握手される。
反論する気力は失せてしまい、ただ『あははは…』と引きつった笑顔を作り、虚ろな目で長太郎の笑顔を見ていることしか出来なかった。
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