†鳳宍......................
□ブルジョワ飼いました。
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「宍戸さん」
「宍戸さ〜ん」
へこへこと俺をつけ回すその様子は、まさに大型犬。
それも、大切に育てられた箱入り息子のブルジョワ犬だ。
いつ何処にいても現れる彼を邪険にしていたはずなのに、愛しく思ってしまったのはいつからだったろう。
でも、自分を慕ってなついてくれる人が可愛くないわけがないだろ?(いや、もはや犬そのものだが)
部活の帰り道、いつものように長太郎と一緒に帰っていた。
ハードな練習にお互い疲れきっているはずなのに、この犬は見えない尻尾を存分に振り回して、何度も俺の名前を呼ぶ。
「なんだよ、長太郎」
ぶっきらぼうな返事なのに、それだけで跳び跳ねて喜ぶ。
くそ、可愛い。
でかいくせに。
「あれ、宍戸さん、顔赤いですよ?」
「なっ…別に赤くねぇよ!!」
犬にそんな事言われるなんて、激ダサすぎる…
照れ隠しに少し歩く速度をあげてみたが、(くそっ奴の歩幅を考えるんだった)すぐに追い付かれてしまい、俺の前で立ち止まった。
顎を持たれ、上を向かされる。
「すみません、見間違いだったかもしれません。だから…もっとよく顔を見せてください」
近づけられる顔、唇
目を瞑る寸前に見えた夕焼けの光を反射する白い髪。
なんて優美で、なんてロマンチックなんだろう。
キスすると同時に背中に回される大きい腕を、俺はズルイと思った。
甘く優しいキスが終わり、腕を離された瞬間に、俺はお得意のダッシュで走り出した。
何が何だか解らない長太郎は、数秒後ふっと我に帰って走り出す。
後ろを振り返ると、必死に俺を追いかける愛しい人の姿。
「宍戸さーん!待ってください〜」
「早く来いよ、長太郎!」
ロマンチックすぎて、幸せすぎるおいかけっこ。
彼が追い付くその時までに、火照った顔を沈めなければ。
飼い主も大変なんだよ、色々と。
[END]
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