†鳳宍......................

□あの時の涙は…
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赤く染められた教室を出るとき、俺は彼を守り抜くと決心した。
自分がどうなってもいい、貴方に嫌われても、恐がられても構わない。
ただ、貴方が生き残れればいいと思った。


だから、尊敬していた先輩を殺した。

だから、大切な親友を殺した。


彼らが死に際に俺を見上げた時、心が狂ってしまいそうになった。
その顔は痛みに歪みながらも、俺を睨んではいなかった。


―彼らは俺の行動を許したのだ。


息が出来ない程に罪悪感がのし掛かり自殺したい衝動に駆られたけれど、俺には守らなければならないものがあるじゃないか、とそう言い聞かせて頑張った。
俺が知人を殺す様子を、宍戸さんは震える体を両腕で押さえながら黙って見ていた。
そしてゆっくりと近づいて来て、返り血を浴びて赤く染まった俺の顔を濡らしたタオルで拭ってくれた。

綺麗に拭き取った後無理に笑顔を作って、唇が触れるだけのキスをしてくれた。


『人殺しの俺が怖くないんですか』

と聞くと、

『お前が俺を殺す訳がないだろ?』

と返された。


当たり前じゃないですか、俺がどんなに貴方に惚れてると思ってるんですか、と笑い返した。

こんな状況にあるのに、幸せだと感じるなんて。



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