◎タカラモノ

□あめよさんから文章
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【ホワイトデー(エリあじ)】




「ねぇねぇ、おいしい?」
「それなりに」
 鼻に抜ける独特の香りとぱりぱりとしたチョコの食感のこのアイスは、世間一般では歯磨き粉味だと言われているらしい。定番フレーバーでありながら、結構な言われようなのではないかと思う。正直アイス以外のものを口に入れても味がしないので歯磨き粉の味とやらもよくわからないが、これがそうなのだと言われればまぁそうなのかと思った。嫌いな味ではない。
「駄目な人はとことん駄目らしいけど、中毒になる人も多いんだってー。エリちゃんもチョコ民党入る?」
「そこまでではない」
 チョコ民党なるものがどういったものかは知らないが、歯磨き粉味だと認識しながら中毒になるそいつらの頭は大丈夫なのだろうかと思う。ならもういっそ歯磨き粉を食べていればいいのではないか。
「さすがに歯磨き粉は食べらんないよー。おいしそうな匂いだけどさ、体に悪いもの色々入ってるんだよ?」
 思っていることを正確に読み取ったらしい紫陽花の言葉に軽く返事を返して、コーンを持つ小さな手ごと引き寄せてアイスを頬張る。確かに歯磨き粉味だと言われれば思うところもあるのだろうが、水色のアイスに茶色いチョコレートの組み合わせはいい色合いだと思う。
「紫陽花」
「んー?」
「ホワイトデーはバレンタインのお返しの日なんだろ」
「そうだよー。だからエリちゃんにお返し!」
「バレンタインに、俺はお前からもらって、お前に俺も渡した。それでプラマイゼロじゃないのか」
「んもうわかってないなーエリちゃんはー」
 ぷぅ、と大仰に膨らませた頬を片手で潰してやると、ぶーぶーと何かしらの文句をたれる。それを可愛いと思えるほど色ボケしているつもりはないが、なかなかに愛嬌があって面白い。子供特有の弾力と滑らかさを持った頬をむにむにと押しつぶしていると、さすがに不快なのか眉を寄せた。抗議の視線を無視して、むりょりと頬を押しつぶす。
「明日」
「にゃに?」
「話はつけておくから、空けておけ」
 でかける、とだけ告げて手を離す。こちらとしては今からでもかまわないが、部下を持つこいつとしてはそうもいかないだろう。そのあたりは話をつけて、毎日怠惰に過ごしている色ボケに任せておけばいい。
「明日? どこ行くの?」
「どこにでも」
 何日でもどこへだろうと、好きなだけ付き合ってやる。それがホワイトデーのお返しとやらになるのかどうかは別として。
 じゃあ季節だしきれいな梅が見たい! と笑う紫陽花に頷いて、手元のアイスに目を戻す。まだ寒いとはいえ、生温い気温にだいぶ緩くなっているようだ。
 歯磨き粉味の水色と、ストロベリー味の桃色。
 なんとなく嫌な組み合わせだと思わないでもないが、それもそれで紫陽花らしいと言えばそれらしいと、融けて細い指にかかったアイスを舐め取った。









ホワイトデーイラストに文章を付けていただきました〜v
旅行…だと?それなんてエロゲ?←
ちなみに自分はチョコ民党です。
エリカさんがイケメンすぎる件。


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