◎タカラモノ

□独楽さんからの頂きもの
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【悪童の戯れ】



約束があるのだからと自分に鞭打ちするも、うとうととまどろむ心地よさには勝てずにいた。時折、がくっと肘を滑らせては、壁掛けの時計に目をやる。そうしてまだ時間はあると確認するやいなや、また夢へと誘われるの繰り返し。しかしながらそんなひとときは永久ではないと改めて認識させるように、どんどんと玄関からの騒音に重い腰をあげた。

「ちーっす。ふらわーず・かんぱにーでーす」
「おお、待ってたぞ」

戸の立て付けを直さなければと思いつつ、ずるずると今日まで来てしまった。先日に竜舌蘭が蹴りあげてからさらに調子の悪くなった戸を放置するわけにもいかず、以前に椿からこの会社の話を聞いたことを思い出し、電話を掛けてみたんだったかのう。と、起き抜けの頭を必死に動かしながらも、錠を外した。

「何じゃ、姫女宛はいないのか」

手間取りながら戸を開けると蒲公英が工具箱を持って立っていた。その後ろでは僕らはおるよ〜とひらひらと手を振る桜と御辞儀草の姿もあった。期待外れな面子かとあからさまに嫌そうに顔を歪めてみたが、そんな様子には目もくれずに浮き浮きとした面持ちの彼らを見てため息をつく。

「何故、お前さん達が居る」
「ねむの木くんにここの茶菓子は最高だと聞いたんだ。それを食べるのが僕に与えられた使命だからね!」
「“僕”やのうて“僕たち”、な」

がやがやと楽しそうに談笑する彼らに頭が痛くなり、再度ため息をついた。じゃあ、失礼して…と失礼などとは微塵も思ってはいない様子で、しかし、うやうやしく下駄を揃えて客室の方へ小走りして行く桜に続き、選ばれしこの僕が最初に頂く!と意気込み追いかける御辞儀草が奥へと消えた。

「ちゃんと俺の分も残しとけよー」

腹減ってんのにと愚痴をこぼすも、てきぱきと仕事をこなす蒲公英に感嘆の声をあげる。ものの数分もしない内に、するりと滑らかに戸を開閉させた。

「これでよし」
「ほぉ、お前さんは見かけに寄らず器用じゃな」
「見かけに寄らずは余計だから」

とう!と人の頭に手刀を入れたかと思うと、今度はわしゃわしゃと髪を撫でまわした。

「また何かあったら言ってくれよ、おじーちゃん」

そう笑顔で言ったかと思うと、俺にも食わせろよ、とせわしなく靴を脱ぎ捨ててバタバタと廊下をかけて行った。その笑みから悪意は読み取れず、だけども小馬鹿にされている感覚に馴染めずにただ呆然と立ち尽くした。

***

「ごちそうさん」「ごっそさんでした」「美味しかったよ」

来客用の茶菓子ではあったが、丸々五箱を食いつくしていった客人(主に蒲公英であることは言うまでもないが)に苦言を呈したところで、素直に言うことを聞くやつらではないことは重々理解していた。不自然な笑顔をひきつらせながら、どういたしましてとは言ったものの、建前でもまた来てくれとは口が裂けても言えなかった。じゃれ合いながらじゃあなと手を振る三人からは笑顔がこぼれ、次にはつられて破顔しその手を振り返してしまった自分の姿があった。

なんともまあ、憎めない悪餓鬼どもめ。








蒲公英を出してもらいました〜v
ワルガキ三人と瓢箪君で和みました〜(´∀`*)
懐かれるおじいちゃんどんまいです←
ありがとうございました!

       
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