◎タカラモノ

□霧雨璃亜さんからの頂き物
8ページ/18ページ




【薔薇色】




「やあ!今日もいい天気だと思わないか?いや君だったらこの天気にすら文句を言っていそうだけれど、まあそれはともかくとして今日の服はどう思う?」
張り付けたような笑顔を浮かべて振り返る。
今日もまた纏っている蒼の上着に軽く笑みを深めてしまった。
「毎回毎回……あなたはどうしてこうも挑発してくるんでしょうかねえ…」
にこにこと笑ってある程度の距離を取っている相手は、確かに最近は蒼の使い方を(二回目の邂逅よりは)考えているようだ。
今日は純白の髪に蒼の上着、黒のズボンを纏っている。
「………うまくなればなるほど、危険が増すってわかっていないんでしょうかねぇ」
小さく呟いて一歩、足を踏み出す。
少し驚いたような相手の顔。
まあ、今まで僕から近寄ることは無かったから驚きもするだろう。……いや、見極めた距離が縮められたのが怖いのか?
なにはともあれ、いつもと違う顔が見れたことに内心微笑む。
相手の瞳を見下ろす角度が直角になりそうなほどの距離で、視線を絡める。
「………今日は蒼薔薇と白薔薇の融合ですか?」
不意に思い付いて尋ねると、満足そうに相手は笑った。
「よく気づいてくれた。探して見れば世の中には様々な色の薔薇があるじゃないか。だから色を混ぜてみるのもいいんじゃないかと思ってね」
あぁ、だから……
「そうも綺麗な笑み、浮かべないでくださいよ……」
不思議そうな光を宿した瞳を振り切って、かがむ。
顔の近くに来た白い首筋に、がぶりと歯を突き立てた。
「痛っ…!」
「傷つけてみたくなるでしょう?……あぁ、傷つけられるために着飾って来てくれているなら、僕は大歓迎ですが」
ニッコリと微笑んで首筋に手を添え、片手で軽く首を握る。
指の力は少しだけ強く。
……そんなことをしても、薔薇は逃げない。
「今日は、君が傷つけようと思うくらいには美しかったということだな?」
あまつさえにやりと笑ってくれやがった相手は、楽天的な考えを僕に伝える。
「……………あなた、馬鹿でしょう。しかも結構重度の」
「それは違うさ。私はただ美しさを磨いてるだけだ。それは馬鹿とは言えないだろう?」
「馬鹿ですよ。……そういえば馬鹿と薔薇ってローマ字一文字だけの違いでしたね」
「……それは地味に失礼じゃ無いか?」
「知ってますよ?………まあ、なにはともあれ……」
傷つけられても美しくなろうというその気概は称賛しよう。
「また着飾ったら、見せてください」
「で、綺麗だったらまた噛むのか?」
尋ねられてはぐらかすように微笑んで。
それでも相手は、笑った。
「まあ、君に認められれば他のみんなも認めるだろうしね。見せに来るさ」
傷つけられそうになったら逃げるがね。そう笑った相手の中では、随分と審美眼が高く認識されているらしい。
「…太陽が待ちはじめるまで公園にでも行きますか。人多いですし」
あまりの奇抜さに引かれるがいいと思って提案すれば、名案だと言うような顔になる。
「ふむ、私の美しさを世間に知らしめられるチャンスだな」
……あぁもう、この愛しい馬鹿を本当にどうにかしてしまいたい。
「この前の質問ですが」
「質問?」
「あなたは、あなたがなりたい色で良いと思いますよ」
さすがに歩きだしている今、何かをするのは面倒だ。
だからそう言って、ぐしゃりと相手の頭を撫でた。
セットが乱れたのを慌てて直すがいい。






そんなわけで薔薇を藤さんのお友達にしてもらえました!
いやっほう(´∀`*)
ついに噛み付かれてるww
毎回素敵な文をありがとうございます!



            
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ