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□ろくな女じゃ1
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「うっそお!?何で!?」
「…聞く切欠がなかった。」
「はは、長次らしい。」
「しかし、向こうはお前を知っているのだろう?」
「………どうだろう?」
いや、俺達に聞かれてもなあ…。
困って各々苦笑いで顔を見合わせれば、しばしムスッとしていた小平太が、非常に喜ばしくない限りで満面に笑みを浮かべる。
う、お。この一片の迷いもない笑みの裏には、必ず、犠牲が。
「じゃーさ!!その子呼ぼう!今晩酒盛りに!!」
『…はあ!?』
「俺らも晩酌ついでに酒盛りしてさ!いーじゃん!明日休みだし!」
い…いやいやいやお前!そんな名案とばかりに言ってくれるがな、そこまでしてそのくのたまが気になるか!?
そう言った俺をはじめ、周りも何とか小平太を諭そうとするも、な!決まり!と聞く耳持たずのこの暴君には馬の耳に念仏。
俺達は少し迷惑そうな顔をして箸を進める長次に同情の視線を寄せつつ、潔く諦めた。
「じゃ、長次!上手くつれてきてな!」
「……。」
「どんまい、長次…。」
「おい食満。確かこの間、いい酒を持っていただろう。あれが飲みたい。」
「あーあれな。分かった持ってくる。」
「普通に乗り気になってんじゃねーよ…お前ら…。」
「だがお前も気になるのだろう?文次郎。」
善人ぶっても好奇には負けているのが顔に出ているぞ。そう言われてグッと口を引き絞る。
実際頭の片隅で、今日の鍛錬の予定を組み替え始めていたものだから、尚のこと言葉に詰まる。
うるせえ、てめえらと違って俺は常識人なんだ。そう言ったら四方八方から頭に向かって手を振り下ろされた。なんだてめえら!!喧嘩打ってんのか!!!
『常識とか、文次郎だけには言われたくない。』
百歩譲って仙蔵達はいいとしてもなあ!
俺だっててめーにだけは言われたくねえよ!!小平太!!
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