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□ろくな女じゃ57
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要するに、忍術学園の方に向かえばいいんだ。きっと三之助もそうしてる。もう学園も近くだし、作兵衛もそんな心配してないだろ!



「よし、こっちだな!」



町に用事に出た俺達が、はぐれた理由は何だったっけか。そうだ三之助が、突然帰り道、薬草何たらとか言い出したんだ。そのまま横道に逸れて、アイツが薬草とか言うの珍しいなあと思って待っていたらいなくなってた。ヤバいなあまた作兵衛に怒られるなあと連れ戻そうとしたら作兵衛もいなくなったんだよな。参ったよなあアイツら。バラバラに動くなよなあ!



「三之助ー!!さくべー!!!どこ行ったー!!!」



走れども走れども、道がなかなかみつかんないな!でも、アイツらもこっち向かってる筈だから、いずれ必ずぶつかるはず!まだまだ明るい昼間だから天気が崩れそうにないだけよかった。さっさと帰って、土産の団子食いてえなあ!



「腹減ったー!!」

「そりゃ俺のセリフだっつーの!!アホ!!!」

「でっ!?あっ!さくべー!!」




後ろ頭をひっぱたかれて足を止めればおお!作兵衛じゃないか!やっぱ方向こっちで合ってたんだな!と自分を見直したら、もう一発叩かれて今度は結構痛くてしゃがみ込んだ。おおう…!



「合ってねえよ全然よお!!」

「なんと…!」

「なんと…!じゃねえー!!何ちょっとかっこよく言ってんだ!!兎に角行くぞほら!次は三之助探さねえと…!」

「次屋なだけにな!」

「黙って反省して縄結べ!!」

「すみませんでした痛い!」



うーまあ、休みなのに探させて悪いとは思ってるから!団子は一個多くあげよう。よし、反省終わり!腹減った!

ほんでその後、縄で繋がったまま歩き始めてから程なく、俺達は学園に続く道に出た。おおー流石は作兵衛、と褒める間もなくアイツは自分に結んだ縄を解くと、それをそのまま手近な木にくくりつける。間に俺を挟んで。


「…さて、お前一緒だとまたどっか行くかもしんねえから、一歩も動かずそこで待ってろ。いいな!一歩も動かずだぞ!!」

「にしてもこれはひどくないか?」

「お前は落ち着きないからこれぐらいで丁度いい。」

「なんと…!」

「…それブームなのか…?」


「にしてもこれ、完全に盗賊にやられました的な…」

「手は使えるだろーが。」

「本気で盗賊きちゃったらどーすんだよ。」

「すぐ来るから心配すんなって。」



心配すんなって言われてもなあ…第一、すぐって言うけどそんな簡単に三之助見つけられんのか?アイツは無自覚だからさあ、多分俺より見つけんの大変だと思うぜ。

的なことを作兵衛がキレないようにやんわり伝えると、鼻で笑われた。うわ、やんわり言わなきゃよかったちょっとムカつく!



「バーロ、どっちもどっちだよ。兎に角待ってろよ。くれぐれも探しに行こうとかぜってー考えんなよ!」

「おう!腹減った!そういや作兵衛、お前に預けといた団子は?荷物になるから置いてけばいいんじゃないか?」

「お前に食われそうだから遠慮しとくわ。」

「なんと…!」

「それはもういいっつーの。」



兎に角行ってくんぞ!と腹を鳴らす俺を置いて、またすたすたと山ん中に入って行く背中。うーん流石は男・富松。かなり頼もしい後ろ姿だけど、団子は置いて行って欲しいと思いました。


……つーか、ん?あれ?



「おいっ!おーい作兵衛ー!おーいっ!!」



もう木の中に隠れきっちまった作兵衛に、呼びかけても返る返事の気配はない。段々音が遠くなる、段々気配が消えていく。

仕方がなく俺は黙って、さっき見ていた作兵衛の背中をできるだけ鮮明に思い出そうと記憶を取り出した。薄っぺらい背中の荷物に、空いた両手。

んん…?やっぱり、俺の見間違いだったか?でも、アイツ、今、確かに、







「…団子持ってなかったよなあ…?」







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