LOVE MAGIC

□MAGIC.3
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マネージャーになって数日が経った。
私のマネージャー振りは幸村君を筆頭にテニス部からかなり評判がいい。
ただ一人を除いて。


この日私は3時間目の英語をサボって屋上に居た。
屋上に居れば全てを忘れられる。
そんな気がする。


後ろから扉が開く音がした。
振り向くと鮮やかな銀が目に入った。


『…仁王…君?』

「何じゃお前さんがおったんか」


仁王君が初めて私の言葉に返事をしてくれた。
その事実に驚いて私はしばらく固まっていた。
そんな私に溜息をついて仁王君は屋上から出て行こうとした。


『ちょっと待って!』


それを私は必死に引き止める。
何となく今なら仁王君が素直にぶつかってくれると思った。


必死な私に負けたのかちょっと距離があるけど仁王君は私の隣に腰を下ろしてくれた。


『屋上。よく来るの?』

「…ああ。今日はお前さんがおるとは思わんかったけど。最悪じゃな」


皮肉も込められてたけど私の言葉に返事してくれる仁王君に顔が綻んだ。


『空が近いね』


私のその一言に仁王君はふっと悲しそうな顔をした。


「お前さん、どこまで知っとるんじゃ」

『多くは知らないよ。彼女が亡くなったって事だけ』

「死んだ…か」


ぽつりと呟く仁王君。
その一言がなぜか痛くて目を伏せた。


「お前さんの事は嫌いじゃ。あいつに似とる…あいつを思い出す」

『…私の事は嫌いでいいよ。いいからさ、私は私って事認めて。私は私なの。山下莉奈よ』


仁王君は目を丸くして驚いたけどすぐにポーカーフェイスを取り戻した。


「やっぱりお前さんの事は嫌いじゃ」


そう言って立ち上がった仁王君。
そしてぽつりと、でも…と呟いた。


「山下は山下じゃな」


そう言って屋上を出て行った。
太陽に反射して彼の顔は見えなかったけど、声のトーンがどこかスッキリしていた気がした。


取り合えず一歩前進…かな?




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