LOVE MAGIC

□MAGIC.4
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あの屋上の件があって以来、仁王君と結構話すようになった。
そして決まって3時間目は屋上で一緒に過ごす事になった。


突然仲良くなったもんだから、もちろんテニス部のレギュラー陣は驚いていた。
特に丸井君。
柳君は興味深そうにノートに何かを書いてて幸村君は満足げに笑ってたっけ。


「莉奈、これから仁王のとこ?」

『幸村君。そうだよ。今から屋上』

「そう。あのさ莉奈俺らの事名前で呼んで…」

『あ、もう時間がない。じゃあ行くね』


急いで幸村君の元から離れた。
続きを聞きたくなかった。
何でそんなに幸村君は私を名前で呼ばせたがるのだろう。


屋上へと続く扉を開けると一面真っ青な空が視界に広がった。


「山下、こっちじゃ」


上を見ると給水タンクの上からひらひらと手を振る仁王君と目が合った。
一生懸命給水タンクを上って仁王君の元までたどり着いた。
仁王君は空を見つめながら、タバコを吸っていた。


『タバコ吸うんだ』

「あーまあな」

『一本ちょうだい』


私の言葉に仁王君は目を丸くした。
私仁王君の驚いた顔見てばっかだ。
仁王君は、ほれと一本私にタバコをくれた。


『ライターはあるからいいよ』


ライターをぷらぷらさせていた仁王君の手を見ながらぽつりと呟いた。
火をつけて煙を肺に溜め込む。
久しぶりだな、この感覚。


「山下が吸うとは意外じゃな」

『よく言われる』

「止めんでいいんか?」

『…何を?』

「俺のタバコ」


仁王君はタバコを吸いながら自嘲気味に笑った。
その笑顔を見て私もつられて苦笑した。


『止めないよ』

「は?」

『タバコ吸う人ってね寂しい人が多いんだよ。心に蟠りがあったり…だから何かに逃げたくなるの。仁王君は心が寂しいんだよ』

「お前さんマネージャー失格じゃな」

『うん、そうだね。失格だ』

「でも人間としては最高じゃ」


静かに泣いた仁王君を私は見守る事しか出来なかった。
抱きしめられなかった。
それはきっと私があの温もりを忘れたくなかったから。




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