HELP ME!

□HELP.10 監禁
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みんなが口を揃えて言う。
日吉は真面目だと。
周りから見たらそう見えるだろうな。
今まで培って来たんだ。
いつか…こんな事をしても誰からも疑われることのないように、真面目な日吉若を作り上げてきた。


だけど今は授業中も部活中も、身が入らない。
早く家に帰りたい。
家に帰った時の事を想像するだけで高鳴る鼓動。
今日はあの人はどういう反応で俺を出迎えてくれるのだろう。


「跡部…莉奈ちゃん、まだ見つからへんの?」

「あぁ…もう1ヶ月だ…。連絡も何もない。無事で居てくれればいいんだがな」


あそこまで弱ってる跡部さんを見るのは初めてだ。
少しの優越感に浸る。
跡部さんも所詮1人の男だ。
恋人が居なくなっただけであんなにボロボロになるもんなんだな。
あぁ、部活が終わるまで待てない。


「跡部さん、俺用事があるんで帰りますね」

「…あぁ、いいぜ」


俺は急いで帰る支度をする。
目が合った忍足さんに軽く解釈をし、俺は家まで走る。
待ってろ…もうすぐ帰るからな。


家に着くとすぐに鞄を自室に放り投げ物置に向かう。
この物置には家族さえも寄り付かなくなった。
使い方によってはもう俺の物だ。


物置の戸を勢いよく開けて中に入る。
急に聞こえた大きな音に物置の奥の影が激しく揺れる。


「今日は大人しいんですね…莉奈さん」

『……っ』

「まあ、昨日あれだけ殴り飛ばせば大人しくなりますか」


俺は手足を拘束されている莉奈さんにジリジリと近付いて行く。
莉奈さんは恐怖で体を震わせるが、俺から逃げることは出来ない。


『…日吉…。もう…1ヶ月だよ…?いい加減…もういいでしょ…?』

「ダメですよ、まだまだ足りない」

『…何が目的なの?』

「目的?ただ跡部さんに下剋上したいだけですよ」


俺が莉奈さんを好きになった時にはもう彼女は跡部さんの物だった。
俺はどう足掻いても跡部さんに勝てない。
こんな事すらも下剋上出来ないのだ。


『もう…いやっ…!景吾!助けてよ…景吾…景吾…景吾…!』


泣きながら跡部さんの名前を叫ぶ莉奈さんの顔を俺は勢いよく蹴り飛ばした。
やっぱり莉奈さんには血が似合う…。


莉奈さんが跡部さんを忘れるまでは、ずっとこのままですよ?



HELP ME!
(俺を助けて!)
(貴女が俺を好きにならないから)
(いつまでこの地獄が続くの?)
(景吾…会いたいよ)






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