for seven days

□ZEROday
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何年前のことだか覚えてない。
それほど忘れたい過去がある。
だけど記憶の底にこびりついて離れない。


何年か前に見知らぬ男に襲われそうになった。
事件は未遂に終わったけど、私にはその恐怖がまだ植え付けられている。


あの男のあの脂ぎった肌、汚い笑み。
ちらつかせていたナイフ。
とめどなく流れる血。
痛みに顔を歪める目の前の人。


目を閉じると浮かんでくる光景に唇を噛み締める。
この日から私は男嫌いになった。


普通に喋ることは出来るし、男相手に笑うことも出来る。
ただ触られるのが嫌。
触られると過剰な程反応してしまう。


そんな中の突然の告白だった。


「俺と付き合ってくれへん?」

『は?』


相手は同じクラスの財前光。
接点なんてない。一度たりとも喋ったこともない。
財前が私を好きなような素振りなんて一度も見せたことがない。
つまり目的は他にあるはず。


『何が目的?』

「…ふーん」


目の前の彼が口笛を吹きながら怪しく笑う。
怪しい笑みに嫌悪感を抱き眉間にシワを寄せる。


「アンタやっぱおもろいわ。他のバカな女とはちゃう」

『だから何が目的なの?』

「女避け。アンタ打たれ強そうやん」


思いっきり嫌な顔をする私に財前はすかさず押しの一言を付け加える。


「7日間。7日間だけでええねん。それに山下の男嫌いも克服できるかもしれへんし?」

『……っ』

「何で?って顔しとるな。見れば分かんねん」

『…いいよ。その話乗った。ただし期日の延長とかはしないからね』

「話の分かる奴でよかったわ」


男嫌いを治したいとかじゃない。
ただ何となくこの話に乗った。
たった7日間だけじゃないか。
7日間だけ財前に付き合えばいいだけの話。


こうして私達の7日間だけの付き合いは始まりを告げた。






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