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□エレジー狂想曲
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ブン太が彼女と別れた。
1週間。今回も短かった。
因みに最短記録は8時間。
だから何だって話なんだけど。


ブン太は一々私に彼女の事を報告してくる。
だから何だって話なんだけど。


正直言って私はブン太が好きだ。
ブン太は多分私の気持ちに気付いている。
だからわざと彼女の事を私に報告して来るんだ。
明らかに嫌がらせとしか考えられない。


ブン太を好きになって笑う回数が減って、泣く回数が増えた。
これって最悪だよね。
ブン太が私の笑顔吸い取ってるに違いない。


正直言ってブン太の考えてる事がよく分からない。
彼女取っ替え引っ替えは今に始まった事じゃない。


だけど私がブン太を好きになってその回数はもっと増えた。
本当にブン太は私の事が嫌いなんじゃないか。
この疑惑が頭の中から消えない。


あ、でも友達としての関係は続いてるから嫌われてはないはず。
……多分。


じゃあ何だ?
恋愛対象で見られるのが嫌なの?
男女の友情は成立しないってブン太が言ってたくせに。


さっきまで教室に居なかったブン太が女を連れて教室に戻ってきた。


新しい彼女ですか。
別れて2時間。新記録達成だね。


目の前でイチャイチャするブン太をしっかりと睨む。
ブン太は私の視線に気付いてへらっと笑ってきやがる。


ブン太の隣で女はブン太に擦り寄る。
そして私の方を見ながら猫撫で声で、こわあ〜い。と連呼してやがる。


怖いのはお前のメイクだ。
目の周り真っ黒にしやがって。
顔面は落書き帳じゃねえんだよ。


しばらく睨み合う私と女。
女は私から視線を逸らしてまたブン太に引っ付く。


私はブン太に引っ付く事なんて出来ない。
友達だから一定の距離を取って接さなきゃいけない。
そう、友達だから。


何だか無性に悔しくて悲しくなった。
自分が情けない。
私はあの女を僻んでるだけじゃないか。


あの女に限らず私はブン太の彼女を僻んでた。
彼女達の欠点探して…最低だ私。
こんな事だからブン太に振り向いてもらえない。


ブン太への気持ちを吐き出すかのように机を強く叩く。
ああ、自己嫌悪が私を襲う。


机をただじっと睨む。
泣きそうだ。


「どーした?」


私の頭の上に何か物体が置かれた気がした。
声の主はブン太。
頭の上の物体はブン太の手だ。


『………別に。それより彼女は?』

「別れた」


カラッと笑うブン太。
3分くらいかな?
新記録更新です。おめでとうございます。


「で、お前は何でそんな泣きそうな顔してんだよぃ。俺が原因だったり?」

『…な訳ないでしょ』

「可愛くねえ」

『知ってる』


可愛くないなんて言わないで。
自分でも分かってるけど、ブン太に言われるのとじゃ胸の痛みが違う。


「ってかさ、俺限界だわ」

『何が?』

「莉奈と友達続けんの」

『ど…して…?』


柄にもなく声が震える。
しっかりしてよ、私の声帯。


「俺が何で女取っ替え引っ替えしてたか分かるか?」

『…分かんない』


私は首を横に振る。
私の返答にどうやらブン太は不満そう。


「莉奈に好きだって言わせたかったんだよぃ!」

『…は?』

「お前素直じゃねーからこうしたらちょっとは素直になるかなって思ったけど…やっぱ俺が耐えきれなかったわ」


ブン太の意外な言葉に放心状態になる。
つまり…ブン太は私の事が好きだった?


状況をやっと飲み込んだ時私は一気に顔の熱が上昇する。


「返事はもちろんイエスだろぃ?」

『…馬鹿っ』


私は小さく笑い、ブン太の手をぎゅっと握りしめた。



エレジー狂想曲
(ちなみにその作戦考えたの誰なの?)
(仁王)
(あのペテン師ぶっ殺す…!)






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