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□掠れきったアイラブユー
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自分で言うのも何だけど、私の顔は可愛い。
世界で一番可愛いとかは思わないけど、悪くはないと思う。


性格だって悪くはない。
慕ってくれる人だってたくさんいる。


付き合ってた数だって普通の人よりは多い。
告白だって何度もされてきた。


でも私には好きな人がいる。
そいつは切原赤也。


切原は女遊びが激しい。
だけど好きなんだ。
裏表のない性格とかに好きになった。


切原の彼女になりたかった。
毎日切原のことしか考えられなかった。


だけど…切原が好きな自分が辛かった。
一方的に切原に迫って、恋して。


一方通行な思いが辛かった。
自分が格好悪かった。


何度も切原を諦めようとした。
だけど無理だった。


そんな日、ある先輩の意外な姿に出会った。


先輩は仁王雅治。
仁王先輩の事は正直苦手だった。


顔だけがよくて、性格悪そうだし。
だって詐欺師ってあだ名だよ?
ありえない。


だけど彼の意外すぎる姿を見てしまった。


自主練してる後輩のフォームをチェックしてあげる所。
捨て犬と遊んでいる所。


偶然だけど見つけてしまった。
その日から私は仁王先輩の事しか考えられなくなった。


「莉奈ー。俺と付き合えよ。俺莉奈の事好きなんだけど」

『何言ってんの?冗談は髪型だけにしてよ』

「は?お前潰す…」

『暴力はんたーい!ってか仁王先輩に会わせてよ』

「莉奈仁王先輩好きなの?」

『好きだよー』


私の言葉に眉間に皺を寄せる切原。


そんな顔しないでよ。
私が何のために切原を諦めたのか分かんなくなる。


『私次の授業サボるから』

「じゃあ俺も行く!」

『切原は授業受けた方がいいよ』


後ろでギャーギャー騒ぐ切原をおいて適当に校舎をうろつく。


中庭辺りに目立つ赤髪の先輩を見つけた。
丸井ブン太か。


『ブンちゃん先輩』

「は?お前誰?」

『あ、初めましてか。私莉奈って言います』

「あー赤也の彼女?」

『その解釈やめてください。激しく迷惑です』


私の言葉にケラケラ笑うブンちゃん先輩。
憎めないなーこの笑顔。


「わりーな。でさ、お前は赤也が好きなのかよぃ?」

『何でそうなるんですか…』

「どうでもいいけど、赤也が好きなら捕まえとかなきゃ後悔するぜ」

『は?』

「じゃーな」


そう言って去って行くブンちゃん先輩。
変な人に話し掛けてしまった…。


それにしてもブンちゃん先輩のあの言葉どういう事だろう?


その言葉は数日後に分かる事になる。



*



切原に彼女ができたと聞いた。
それを聞いただけで私の心はぐちゃぐちゃになった。


何だ、私まだ切原の事が好きだったんじゃん。
仁王先輩に逃げるふりして、切原の事忘れてなかった。


切原の事まだ好きだったんだ。


『切原』

「莉奈…」

『彼女いたんだね』

「ちげぇよ!これは…」

『ブンちゃん先輩からプリも見せてもらったよ』


私の言葉に気まずそうに眉を寄せる切原。
申し訳なさそうな顔が今はただ私を追い詰める。


『私の事好きって言ったのは嘘?全部全部嘘?』

「嘘じゃねーよ…」

『じゃあ何だったの?』

「莉奈の事は本気で好きだった。だけど……莉奈はいつも違う人見てて、俺辛かったんだよ」


切原の本心を初めて聞いた。
切原の苦しみに初めて触れた。


切原の泣きそうな顔を初めて見た。


苦しんでたのは私だけじゃない。
私も切原を苦しめていた。


『切原…私仁王先輩にふらふらしてたけど、今回の事で再確認した。私切原が好きだよ』

「莉奈…」

『彼女から切原奪うから』

「今は彼女だけしか考えらんねえ。こんな俺でもいいって言ってくれた人だから」

『それでもいい。私頑張るから』


私の言葉にコクっと頷いた切原に柄にも泣く涙が零れた。



掠れきったアイラブユー
(もっと早く素直になれたら)
(もっと早く好きと伝えたら)
(切原の隣には私がいましたか?)






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