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□アイラブユーを君に
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12月4日。
世間一般からしてみたら何の変哲もない普通の日かもしれない。


だけどここ立海の女子達にとっては特別なイベントの日なのだ。



*



「仁王君はどこ!?仁王君っ!」

「さっき保健室付近で追い掛けられてたって話だよ!」


相変わらず騒がしい。
立海に入学してから3回目の12月4日。


だけど相変わらずこの騒々しさには慣れない。
まあ、慣れたくもないんだけどね。


今日は立海の女子なら誰でも知ってるであろう彼…
仁王雅治の誕生日だ。


仁王はかなり顔が良く、とてつもなくモテる。
彼の魅力はそこだけじゃないんだろうけどね。


だから誕生日やクリスマス、バレンタインなど何か行事がある事にこんな騒ぎが勃発する。
騒ぎの原因は仁王だけじゃないんだけどさ。


まあとにかく今日は仁王の誕生日。
仁王だけが主役なのだ。


朝からの騒動の原因はこれ。
仁王の熱烈なファンが仁王にプレゼントを渡し、あわよくば告白までしようとしている。


だから毎回仁王はこの日は通常通りに授業を受けられずやむを得ずサボってしまう。
それを許可してる学校側にも疑問を感じるが。


まあ、そこはどうでもいいとして、私には役目がある。


なぜか仁王に好かれている私が今日1日は仁王の面倒を見なきゃいけないのだ。


立海には第二図書室がある。
第二図書室は利用頻度が少なくいいサボり場だ。


だけどいつも鍵が開いておらず、生徒の足も遠退いて行った。


だけど唯一鍵を持っている人物を私は知っている。
それが仁王だ。


仁王の避難場はいつもあそこだと知っている。
だから私も重たい足を引きずりながら第二図書室に向かった。



*



第二図書室のドアを勢いよく開く。
机に突っ伏して寝てた仁王の肩が大きく揺れる。


びくびくしつつもゆっくり仁王は振り返って私の顔を確認する。
第二図書室に入って来た女が私だと気付くと仁王は安堵の溜息を漏らした。


私はゆっくり仁王に近付いて行く。


「莉奈ちゃん…」

『何泣いてんの』

「だって…学校着いたら後ろから物凄い女子の数が後ろから追ってきとったんじゃよ…女子怖い…」

『黙れヘタレ。何腑抜けた事言ってんの』

「後ろ向いたら…女子の顔が鬼のようやったんじゃもん…」


学校の女共は騙されてると思う。


この仁王雅治。
実は超がつく程のヘタレだ。


私が黙り込んでる間にも仁王は半泣きで私をじっと見る。


『しょうがないでしょ。今日は仁王の誕生日なんだから』

「こんな怖い思いするんなら誕生日なんていらん!」


バカか…この男は。
去年よりもヘタレ度が増している。


もう勝手にして。
という意をこめて大きく溜息息を吐くと、仁王の肩がまた大きく揺れた。


「莉奈ちゃん…怒っとる?」

『怒ってない。呆れてんの』

「だって…だってな…」

『何。簡潔に説明して』


私は投げやりに言い放つ。
仁王は言うのを躊躇ってるようだ。


あーもう…何なのこの男!

『帰る』


私が図書室の扉を開けようとすると、仁王は立ち上がり大きな声で言い放った。


「俺は莉奈だけでいいんじゃ!莉奈だけに誕生日を祝ってもらえればそれでよか…」


そう言い放った後に顔真っ赤にしてストンと椅子に座る仁王。
何だこのヘタレは。


だけどそんなヘタレが愛おしくて仕方ない。


私は再度仁王に近付いて耳元で囁いた。



アイラブユーを君に
(お誕生日おめでとう)
(好きだよ)
(莉奈ちゃんっ…!)






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