歪んだリップノイズ
□case.1
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「糞ビッチ!」
登校一発目でこれか、と溜め息をつく。
私の周りには4人の女子。
その女子から向けられた視線の中には、色んな物が混じっていた。
憎悪、妬み、嫌悪、僻み……。
あらゆる感情を私は鼻で笑う。
『聞き飽きたっつーの』
だって私は糞ビッチ。
最初は私ももちろんこんなんじゃなかった。
私には好きな人がいた。
ずっとずっと好きで、どうしようもないくらいに好きだった。
3年間も彼を想い、何度も彼のために涙した。
私と彼の関係は非常に曖昧だった。
「好きじゃけど、付き合えん」
何度も彼に言われた言葉だ。
その度私はこの言葉に困惑し、苦悩してきた。
だけどもう一途に思い続けるのは疲れた。
彼への思いを捨てると決意した。
思えば私のビッチ誕生の原因は彼だったのかもしれない。
『ビッチで何が悪いの?私がビッチだとして、あんた達に迷惑かけてないと思うけど』
「かけてるわよ!そうやって何食わない顔してテニス部に近付いて…!」
『何?悔しかったらあんた達もテニス部に抱いてくださいって懇願すればいいじゃない。私のことを妬む暇があるなら自らが行動起こしなさいよ』
私の言葉に顔を真っ赤にして硬直する女達。
そして私はにっこり笑う。
『テニス部に懇願して、抱いてもらえなかった時に初めて私に妬みの矛先を向けなさい』
呆然とする女子達を置いてスタスタとその場を去っていく。
口喧嘩で私に勝てると思うな。
それにしても朝から無駄に疲れた。
教室に入って席に着くと、ポケットの中で携帯が震えているのが分かった。
メールの内容を確認して、すぐさま教室を出る。
向かう先は屋上だ。
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