歪んだリップノイズ

□case.2
1ページ/2ページ




仲のいい男女8人くらいでカラオケに来た。
一応私にも仲のいい子くらいはいる。


ただ、男女の友情は成立しないというのが私の持論だから、男は友達でもなんでもないけど。


適当に笑って、適当に賞賛の言葉を取り繕って、また適当に笑う。


いい加減疲れた。
帰りたいわ。


その時私の携帯が1件のメールを受信する。


これが彼氏だったら言い訳して帰れるのに。
なんて、ひねくれたことを考えながら。


メールを開くと、思い描いた相手ではなく軽く気分が落ちる。
ただ何で彼が…?と疑問に思ったが、内容を読んで私はニヤリと口角を上げた。


これは使える。
サンキュー。


『うっわ…本当にみんなごめん!彼氏が今から迎えに来るとか言ってる…』

「えー、そっかー。じゃあそろそろお開きにする?」

『いや、まだ時間あるしみんなは歌ってていいよ。私は帰るけど。本当にごめんね!』

「しょうがないしょうがない!」


私はゆるりと口元に弧を描く。
ちょっとみんなを思いやるような言葉を残せば一発だ。


そして、タイミングを見計らったように口を開く男が1人。


「俺も母ちゃんに弟達の面倒見てくれって言われたし、そろそろ帰るわ」

「えー!丸井も帰るの?」

「悪い!また時間作って行こうぜぃ」


ぐずる女子達を納得させてニコッと笑う丸井。
丸井マジック凄いな、と私は思わず感心。


テーブルの上に自分の分の会計を置き、じゃあね、とにこやかに手を振って部屋を出る私と丸井。


外に出て、私は1つ溜め息。
私は丸井に向き直って口を開く。


『あのメール何?』

「俺の本心」

『同じ室内にいるのにバカじゃないのって思った』

「でも助かったのは事実だろぃ?」


そう、私のメールの相手は丸井だった。
メールの内容には、2人でどっか行きてーな。とだけ記されていた。


内心呆れながらも、あの空気にいるより丸井と2人でいる方が落ち着くから、私は今ここにいるんだけど。


『弟の面倒見なくていーの?』

「今何時だと思ってんだよぃ。ガキは寝てるっつーの」

『それもそーだ』


乾いた笑いを浮かべる丸井に私はクスリと笑みを零す。


『さて、これからどうしますか』

「決まってんだろぃ。こんな時間に男女2人ってことは行くとこ1つだろぃ」

『丸井君さいてー。家帰りたいんだけど』

「んなこと言ってノリノリなくせに」


丸井の言葉に私は妖艶に笑う。
丸井の言葉を否定できない私がいる。


「んじゃあ、行くか」


私達は自然に手を繋ぎ、歩き出す。
彼氏に対する罪悪感?後ろめたさ?


そんなのないけど?







次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ