歪んだリップノイズ

□case.4
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「亜梨紗ちゃん今日暇?」


そんな電話がキヨからかかってきたのは午後10時を過ぎた辺りだった。


『あー…んー…どうして?』

「いや、俺が暇だからさ家で宅飲みしようじゃないか!と思って」


言葉を軽く濁して返事を返した私に、キヨは明るい声で提案してきた。


『どうせ私とキヨの2人だけでしょ?』

「さすが亜梨紗ちゃん。よく分かってる」

『また折り返し電話かけるから待ってて』


私はキヨの電話を切り、即座に彼氏に電話をかける。


今日は私は彼氏とレストランで食事して、夜景を見てからホテルに泊まるというデートプランを立てていた。


だけど、そんな在り来たりなデートコースよりキヨと2人でいた方が楽しいに決まってる。


「どうした?」

『あ、ごめん。今日のことだけどさ、私今熱が出ちゃってて外出出来なくなっちゃったんだ…』

「え、大丈夫?そっちに看病しに行くよ」

『大したことないから大丈夫。でも悪化したらマズいし、貴方に風邪うつしたくないから』

「そっか…」

『ごめんね。また今度行こうね』


あからさまにガッカリする彼に適当な口約束を紡いで、私は一方的に電話を切る。


嘘だって気付いたかな。
まあ、気付かれたって何の支障もないのだけど。


私は再び携帯を弄り、着信履歴を見返して電話をかけていく。


『あ、キヨ?今日大丈夫になった』

「本当に?超嬉しいけどさ、亜梨紗ちゃん何か用事あったんじゃないの?」

『大した用じゃないし、キャンセルしたから大丈夫』

「分かった!じゃ、今から行く」


キヨの電話を切って、1つ溜め息をつく。
最低だな、私。


でも自覚あるだけマシでしょ?
こんな最低な私と居たがるあんた達もあんた達よ。


私は嘲笑の笑みを浮かべる。
今更どうにもならないことを知ってる。


1度墜ちてしまったら這い上がれない。
彼等とも普通の友達に戻れないことは知ってる。


ただ、キヨは純粋なお友達だけど。
私の唯一無二の男友達。







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