書庫
□虜
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束縛なんて言葉は嫌いだ。カカシはいつもそう言っていた。
実際、それは真実だった。今まで付き合ってきた女の中で、自分を束縛してきた奴が数人いて、殺意に近い感情を覚えたこともある。
そう。大嫌いだった。
言葉や行動で、好きな相手を「縛る」だなんて。馬鹿げている。恋人同士は所詮他人なんだから、プライバシーは守られて然りのはずなのだ。
カカシは、確かにそう思っていた。
サクラを好きになるまでは。
***
「んっ…はっ。」
甘い吐息が室内に溶ける。サクラは夢中になって酸素を求めた。
「はぁ…っ!!」
しかしその行為は中断させられ、再び唇を押しつけられた。
カカシの熱い舌がサクラの口内を犯す。
「なんか呼吸すらも惜しいね。」
「っ…死ぬわよ。」
存分にサクラとのキスを味わってから、ようやくカカシはサクラに呼吸を許した。
カカシの色違いの瞳がサクラを捕らえる。
ここはカカシの部屋。カカシのベッド。1週間の忍務を終えて帰宅したカカシを迎えたのは、サクラだった。カカシは風呂から出たあと、間髪入れずにサクラを押し倒したのだった。
「わたしはこっちが好きかな。」
「んー?」
サクラはカカシの右まぶたに触れた。右目は藍だ。カカシは、サクラが自分の「本当の」目を好きと言ってくれたことがうれしかった。
「ズルい目だなー。」
「ズルいって?」
カカシは言いながらサクラの耳に口を寄せる。サクラは耳が弱い。
「綺麗で吸い込まれそう。」
「…そっか。」
カカシは短く答えるとサクラの耳たぶを甘噛みした。
「あっ…。」
サクラの頬が上気する。その姿がカカシにはたまらなく刺激的だった。1週間ぶりのサクラに酔い痴れる。
サクラは知らなかった。
藍ではなく緋の方の目に、既に吸い込まれているということを。