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□その関係の名は
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夕暮れの並木道。わたしはヤマト隊長と一緒に歩いている。
手を繋いで。肩を寄せ合って。
「じゃあサクラ、また明日、任務で。」
「はい。」
隊長は、わたしの顔を見ながら優しく笑っている。
だからわたしも笑った。
最高に幸せな瞬間だ。
隊長の手はいつもあったかい。
「サクラ。」
隊長は、わたしにキスをした。腰を折って、わたしの唇に触れる。
そして小さく肩を抱く。
「…誰かに見られますよ。」
「たまには構わないさ。見せ付けてやろうよ。」
そう言い合うと、2人で笑った。
別れるのが惜しくなる。
今日の隊長は普段着だ。紺の薄手のシャツに、茶色のチノパン。ヘッドギアを外した真っ黒の髪の毛も、ちゃんとセットされていて、かっこいい。
忍服のときとはまた違って、20代の大人の男という感じだ。
わたしも、一応今日は気合いを入れてきた。
シンプルなワンピースは、前に隊長がかわいいと言ってくれたものだ。ブーツにマフラー。
女の子らしくなるように、考え抜いた服装だった。
「あーっ。帰したくないや。」
隊長は頭をカシカシと掻いている。
翌日が任務の日は、任務のランクに関わらず、家に泊まらない。それが2人の間のルールだ。
「隊長。また次にね。」
わたしは隊長の頬にキスをすると、タタタッと駆け出した。
少し距離が空くと、振り返って手を振る。
そして家の方へと走った…。と見せ掛けて、気配を消し、木陰に隠れる。
「…ったく、かなわないな〜。」
隊長は、わたしにキスされた頬を押さえると、小さく呟いた。
わたしたちは、半年前から付き合っていた。
きっかけは、隊長がわたしに告白してくれたこと。
わたしも隊長のことが大好きだったから、付き合うことはすんなり決まった。
うれしくてたまらなかった。好きな人に好きと言われて。
「次は、任務がない日だな。」
隊長はそう嘯くと、自分の家の方へと体を向けた。
わたしは密かに隊長の行動を見届けていた。明日の任務は確かDランクで、楽だだ。
「…知ってて今日呼んだのか。」
わたしは独り言を言う。彼のことだ。そこまで解っているに違いない。
ちらりと腕時計を見た。
「約束」の時間までは1時間ある。お風呂に入り、支度をしたらちょうどいい。
「…。」
わたしは口を固く結ぶと、家路を急いだ。