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□HEAVEN'S DRIVE
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「え?長期任務ですか?」
サクラがヤマトの方を振り返りながら言う。
ここはアカデミーの教室。ヤマトは、任務報告書を手に持ちながら、困ったように笑った。
「そう。2週間くらいかなぁ。明日から。」
「明日!?」
「うん。今朝急に言われたんだよ。」
「…そうなんだ。」
サクラは、残念そうに呟いた。
最近は任務続きで、ろくに2人きりで会えなかった。デートもしていない。ヤマトの部屋で過ごすこともできなかった。
それなのに今度は長期任務で2週間いなくなるという。
ツンとするサクラに、ヤマトは苦笑した。
サクラの元に寄ると、頭をポンポンと撫でる。
「2週間なんて、あっという間だよ。」
「…はい。」
「それに、帰ったら休暇が貰えそうなんだ。だから、帰ったら、たくさん一緒に過ごそう?」
ヤマトが優しく呟くと、サクラはニッコリと笑った。すると、ヤマトが体を折って、サクラの耳元に顔を寄せた。
「で、夜はたくさんシよう。」
ヤマトの言葉に、途端にサクラは顔を紅くする。
「たっ隊長!」
恥ずかしさから、パンッとヤマトの腕を叩いた。ヤマトは、あははと笑う。
「じゃあこれ、出してくる。」
ヤマトは、教室のドアを開けた。
「はい。あ、明日の準備があるだろうから、今日は自分の家で寝ます。」
サクラがそう言うと、ヤマトはコクリと頷いた。
本当は、ヤマトと一緒に過ごし、明日の出発を見送りたかったが、わがままを言ってヤマトを困らせたくなかった。
ヤマトは、大きい任務の前には1人で支度をしたがるのだ。
「じゃあ2週間後に。」
「はい。頑張って下さい。」
ヤマトは、教室を出ていった。
「2週間、か。」
サクラの独り言が、教室の乾いた空気に響いた。
急に空虚な気持ちになる。ヤマトとは何だかんだ言ってほぼ毎日会っていた。
それが2週間も会えないなんて…。
サクラはキュッと口を結んだ。
「甘いわ。ダメダメ!」
自分に喝を入れるように呟く。
「大人」なヤマトと付き合うためには、こんな「子ども」っぽいことで嘆いてはダメなのだ。
サクラは、頬をパシッと叩くと、教室を後にした。